三鷹の税理士 平林 達夫 の日記

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土地の評価について(3)          ~「宅地」以外の地目の評価方法~

個人の所有する財産を子供や孫などに移していこうと考える場合に、相続税贈与税がどうなるのかが気になっている人は多いことでしょう。

 

相続税贈与税も、財産を受け取ることになった者が、その相続又は贈与で取得することになった財産の評価額(つまり、それによって得をした金額)に対して課税される税金です。
ですので、その財産がどのような金額で評価されるのかは、非常に重要な事項になってきます。

 

本論では、これまで2回に渡り、土地の財産評価を考える際の基本的事項を説明してきました。
法律的な話もしたので分かりにくい部分もあったかと思いますが、ざっくりと「なる程、土地はそんな感じで評価されるんだ」ということを感じていただければ、それでいいかとも思っています。

 

第3回以降は、「財産評価基本通達」における各地目の(基本的な)評価方法の規定を、一番重要で、かつ複雑な「宅地」と、「宅地」以外の「土地」とに分けて解説していきます。
今回は、まず後者、「宅地」以外の土地の評価方法です。
少し長い文章となってしまっていますが、ご容赦いただければと思います。

 

<1>「農地」の評価方法

 

「不動産登記事務取扱手続準則」第68条において「田」は、「農耕地で用水を利用して耕作する土地」と、「畑」は「農耕地で用水を利用しないで耕作する土地」と定義づけられています。
これらを総称して「財産評価基本通達」では「農地」としているわけですが、そのうえで、評価にあたっては「農地」を「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」及び「市街地農地」の4種類に分類します。


それぞれの正式な定義づけは農地法の規定などを用いたものになります。引用してもいいのですが、用語も含め、専門性が高すぎて意味が分からないと思いますので、ここでは止めておきます。
ざっくりとしたイメージとしては、次のように認識していただければいいでしょう。

 

「純農地」は、生産性が高く「宅地」への転用がかなり難しい「農地」。


「中間農地」は、許可を得れば「宅地」への転用が可能な「農地」。


「市街地周辺農地」は、鉄道の駅から比較的近いなど、市街化傾向の高い地域にある「農地」。


「市街地農地」は、その字の通り、市街地にある「農地」。

 

相続・贈与の財産に「農地」がある時には、それがこの4つのうちのどれに該当するのかを判定しなければなりません。


フローチャート式に判定する方法はあり、最終的にはそれに頼らなければならない状況になることもありますが、実務的には、国税庁が発表している「評価倍率表」を確認することで「農地」の区分を確認するという簡易的な方法で判定できることも多いです。

 

「農地」の評価方法は、原則的に「倍率方式」です。
すなわち、その「農地」の「固定資産税評価額」に、「評価倍率表」記載の倍率を乗じて評価額を算出します。

 

ただし、「市街地周辺農地」は、まずその「農地」が「市街地農地」であるものとして評価を行い、その算出結果の100分の80、すなわち80%の金額を評価額とします。

 

また、「市街化区域」以外に存在する「市街地農地」については、「(宅地)比準方式」を用います。
具体的には、「その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額からその農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額として、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を控除した金額に、その農地の地積を乗じて計算した金額によって評価する」(財産評価基本通達40)とされています。


言い換えれば、まず ① その「農地」が「宅地」であるとして1平方メートル当たりの評価を算出し、それから ② その「農地」を「宅地」に転用するのに必要な1平方メートル当たりの造成費などを差し引いた金額に、③ その「農地」の面積を乗じて評価額を算出します。
要約すれば、その「農地」が「宅地」であったとした場合の金額から「宅地」転用にかかる造成費などを差し引いた金額を評価額とするのです。

 

また、生産緑地についても、その「農地」が「生産緑地」でないものとして算出した金額から、一定の割合を控除した金額が評価額となります。

 

耕作権永小作権等区分地上権等の目的となっている「農地」は、その土地の自由な利用が制限されていることになりますので、自ら利用する土地(「自用地」といいます)として評価した「農地」の評価額から、これ等の権利の評価額を控除した金額を、その「農地」の評価額とします。

 

<2> 「山林」の評価方法

 

「不動産登記事務取扱手続準則」第68条において「山林」は、「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」と定義づけられています。
「山林」も「農地」のように、評価にあたっては、「純山林」「中間山林」及び「市街地山林」の3種類に分類します。

 

3つの区分基準も「農地」と同じようなもので、市街地から離れていて周辺の「宅地」の評価額の影響を受けない「山林」が「純山林」、市街地にあって周辺の「宅地」の評価額の影響を受ける「山林」が「市街地山林」、その中間にある「山林」が「中間山林」となります。

 

「純山林」「中間山林」評価方法は「倍率方式」です。
すなわち、その「山林」の「固定資産税評価額」に、「評価倍率表」記載の倍率を乗じて評価額を算出します。

 

「市街地山林」のうち、「評価倍率表」に「評価倍率」が定められているものについては「倍率方式」で評価し、宅地への転用が見込めないと認められるようなものは近隣の「純山林」の価額に比準した評価を行います。


それ以外の、一般の「市街地山林」は、「市街地農地」と同様に「(宅地)比準方式」により評価します。つまり、① その「山林」が「宅地」であるとして1平方メートル当たりの評価を算出し、それから ② その「山林」を「宅地」に転用するのに必要な1平方メートル当たりの造成費などを差し引いた金額に、③ その「山林」の面積を乗じて評価額を算出します。

 

「保安林」は森林法により土地の利用や立木の伐採に制限が加えられているので、「倍率方式」により評価している場合は、立木について所定の計算により算出した一定の金額を控除した額を、「山林」としての評価額とします。

 

特別緑地保全地区内にある山林」は、通常の「山林」として算出した金額の8割に相当する金額を控除した額を、「山林」としての評価額とします。

 

また、賃借権地上権等の目的となっている「山林」も、「農地」の場合と同様に、「自用地」としての評価額から、これ等の権利の評価額を控除した金額を、その「山林」の評価額とします。

 

<3> 「原野」、「牧場」及び「池沼」の評価方法

 

「原野」の評価額、「牧場」及び「池沼」の評価額は、その算出方法が同じものとなっていますので、ここでは両者を合わせてご説明します。

 

1)「原野」の評価方法

「不動産登記事務取扱手続準則」第68条において「原野」は、「耕作の方法によらないで雑草,かん木類の生育する土地」と定義づけられています。
「原野」も「農地」や「山林」のように、評価にあたっては、「純原野」「中間原野」及び「市街地原野」の3種類に分類します。

 

「純原野」は市街化調整区域内に存在する「原野」、「市街地原野」は市街化区域内に存在する「原野」のことを指すのですが、市街化調整区域内に存在していても、大きな公道が通っていたり、周辺地域の宅地化が進んでいるなどの現況にあって、「宅地」への転用が比較的簡単に行えると判断されるものについては「中間原野」として評価を行います。

 

「原野」の評価は「山林」に準じるものとなっています。
つまり、「純原野」と「中間原野」は「倍率方式」により、「市街地原野」は「倍率方式」又は「(宅地)比準方式」によって評価を行います。


特別緑地保全地区内にある原野」及び賃借権、地上権等の目的となっている「原野」の評価も、「山林」に準じます。

 

2)「牧場」及び「池沼」の評価方法

「不動産登記事務取扱手続準則」第68条において「牧場」は、「家畜を放牧する土地」と、「池沼」は「かんがい用水でない水の貯留池」と定義づけられています。

また、財産評価基本通達61及び財産評価基本通達62は、「牧場」と「池沼」は「原野」の評価方法に準ずる方法で評価することを定めています。

 

<4> 「鉱泉地」の評価方法

「不動産登記事務取扱手続準則」第68条において「鉱泉地」は、「鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地」と定義づけられています。

 

鉱泉」に関しては、環境庁が公開している「鉱泉分析指針(平成26年改訂)」というものがあるのですが、その1-1では「鉱泉」について、「鉱泉とは、地中から湧出する温水及び鉱水の泉水で、多量の固形物質、またはガス状物質、もしくは特殊な物質を含むか、あるいは泉温が、源泉周囲の年平均気温より常に著しく高いものをいう。」と定義しています(https://www.env.go.jp/council/12nature/y123-14/mat04.pdf)。

イメージとしては「温泉」のようなものと考えていただいても、ひとまず差し障りは無いでしょう。


とはいえ、温泉法の規定する「温泉」は「この法律で『温泉』とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。」(温泉法第2条第1項)と定義されていて、「鉱泉」以外にも、地中より湧出する水蒸気や、その他のガスも含んでいますから、厳密に言えば鉱泉地」の範囲は「温泉」よりも更に狭いものになります。

 

そのような鉱泉地」の評価についてご説明します。

 

まず、「評価倍率表」に「評価倍率」が記載されているものについては、「倍率方式」による評価を行います。

一方、「評価倍率」の記載されていない「鉱泉地」については、その「鉱泉地」の「固定資産税評価額」に次の割合を乗じて評価額を算出することとされています。

 

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そこまで難しい算式では無いのですが、それでもある程度専門的な知識が無いと分かりにくいと思いますので、細かいことは実際に計算する時に改めて確認すればいいとして、ここは単純化して、鉱泉地」の「固定資産税評価額」にその鉱泉を利用する「宅地」の評価額を反映させた一定の割合を乗じて評価する、と覚えておいていただいても構わないでしょう。

 

なお、「鉱泉地」から湧出する温泉の利用者が旅館や料理店などの営業者ではない場合は一定の割合を控除した金額が、温泉権「引湯権」が設定されている場合はその権利の評価額を控除した金額が、それぞれ、「鉱泉地」の評価額となります。

 

<5> 雑種地の評価方法

「不動産登記事務取扱手続準則」第68条において「雑種地」は、「以上のいずれにも該当しない土地」と定義づけられています。
つまり、今回ご説明してきた地目の土地と、次回ご説明する「宅地」以外の土地は全て「雑種地」となるわけです。

 

「財産評価基本通達」は「雑種地」の評価方法を「原則として、その雑種地と状況が類似する付近の土地についてこの通達の定めるところにより評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価する。」(財産評価基本通達82)としています。

 

実務的には、「市街地」にある「雑種地」は「宅地」としての1平方メートル当たりの評価から造成費などを差し引いた金額に地積を乗じる「(宅地)比準方式」を用いることが一般的なようです。

一方、「市街地」以外の「雑種地」の場合は、周辺に「宅地」が無く、「農地」や「山林」、「原野」などに囲まれているようであれば「純農地」、「純山林」、「純原野」を用いた「比準方式」で評価するのが一般的です。「宅地」を用いた「比準方式」で算出する場合には、評価をさらに減額させる「しんしゃく割合」を乗じて、評価額を算出します。

 

ただし、細かい話になりすぎるのでここでは書きませんけれども、「ゴルフ場用地」「遊園地等用地(遊園地、運動場、競馬場その他これらに類似する施設の用に供されている土地)」「鉄軌道用地」及び文化財建造物である構築物の敷地の用に供されている土地」については上記方法ではなく、個別の評価方法が定められています。


また、賃借権、地上権等の目的となっている「雑種地」も、「農地」等の場合と同様に、「自用地」としての評価額から、これ等の権利の評価額を控除した金額を、その「雑種地」の評価額とします。


以上、長くなりましたが、「宅地」以外の地目の「土地」の評価方法について、なるべく簡単に、その概要をご説明しました。

次回は、「土地」評価の本丸とも言うべき、「宅地」の評価方法について、解説を始めます。