三鷹の税理士 平林 達夫 の日記

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株式会社の解散について

<1> 会社解散の事由

 

会社を解散しようと思う理由はその会社によってケース・バイ・ケース、一概に「これ」と言えるものでは無いでしょう。
ただし、法律の観点からは、会社を解散できる理由は「会社法」で明確に定められています会社法第471条~第474条)


以下に列記してみましょう。

 

① 定款に定めた存続期間の満了
② 定款に定めた解散の事由の発生
株主総会の決議
④ 合併による会社の消滅
⑤ 破産手続き開始の決定
⑥ 裁判所からの解散命令
休眠会社のみなし解散

 

これ以外の理由の解散は、法的に認められていません。

 

このうち、特定の条件を満たせば、あるいは特定の目的を達成すれば会社を解散することを初めから決めているような は、かなり特殊な事例と言えるでしょう。


は吸収合併や新設合併が行われる場合ですが、このような時に被合併法人が解散するというのは良くある話ですので、特に説明は不要でしょう。


は、会社の設立が不法なものだった場合、役員・社員が違法行為を繰り返し行っていた時などに裁判所の判断で会社の解散が命じられる場合。

は既に経営の実態のない事業活動を停止した休眠会社が、最後に登記を行ってから12年間経過しても次の役員変更登記等を行っていないことから、法務局によって解散したものとみなされて「みなし解散」の登記が行われる場合(なお、これに該当する場合には3年以内に所定の手続きを行うことで会社を復活させ、継続することが可能です)。

つまり、も、一般的な理由とは言いにくいものです。

 

会社が解散する場合に良くみられる理由は、③ の「株主総会の決議」⑤ の「破産手続き開始の決定」でしょう。

 

会社の解散は、事業の業績悪化や、事業継続のメリットが減少した際に検討されるものですが、現時点では経営上・財務上に特に問題の無いような会社が後継者不在や先行きの不透明さ等から解散の道を選ぶ場合には、③ の株主総会において解散決議を行ったことによる解散をすることになるでしょう。
解散は特別決議により決定しますので、総議決権の過半数保有する株主が出席した上で、その議決権の3分の2以上が賛成することが必要となります。

 

一方、会社が債務超過に陥るなど、経営状況・財務状況が著しく悪化し、会社経営を継続することが困難となったことから、裁判所に対して破産手続きの申し立てを行い、それが受理されて破産手続きが開始されるのが ⑥ です。
この場合、裁判所が選任した破産管財人が会社解散の手続きを進めていくことになります。

 

以下、ここでは、会社が自ら主体となって解散の為の手続きを進めていくことになる、③ のケースを前提に説明をしていくことにいたします。


<2> 会社解散の流れ

 

会社を法的に消滅させるには、厳密には「解散」だけではなく、その後に「清算」という手続きを行う必要があります。
この清算手続きでは、解散時に会社が有していた売掛金や貸付金といった資産や買掛金や借入金などの債務を整理し、財産を保有している場合には、それを現金化します。

 

そこで、ここでは、解散決議から会社の消滅までの流れを簡単に説明していきます。

 

1) 解散登記と清算人の選任

前述したように、株主総会を開催して解散の可否を諮ります(特別決議事項)。


この時に、解散や清算の手続きを行うことになる「清算人」の選任を同時に行うことが一般的です(定款に誰を選任するかという定めがある場合を除く)。
顧問弁護士がいるような大企業であれば、その顧問弁護士が就任することもありますが、中小企業等では代表取締役清算人に就任することがほとんどでしょう。

 

株主総会で解散決議を行い、清算人を選任したら、それから2週間以内に、解散登記と清算人選任登記を法務局に行います。
この時、解散登記に3万円、清算人選任登記に9千円の登録免許税を支払います。

 

解散登記が終了したら、税務署や都道府県民税事務所、社会保険事務所等に会社解散の届出(異動届出書)を提出します。
添付書類として登記事項証明書(履歴事項全部証明書)が必要となるので、法務局で必要な部数の交付を受けます。

 

2)清算手続きの開始

清算人は、解散の時点における、その会社の財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会で承認を受けます。

 

また、2ヶ月以上の債権申出期間を設定して、会社債権者の保護手続きを行います。
具体的には、債権者に向けて会社が清算手続きに入ったので設定された期間内に保有する債権を申し出るよう、官報への公告(掲載料は文字数によって異なります)を行うと同時に、会社が把握している債権者に対しては個別に通知・催告を送ります。

 

3)解散確定申告書の提出

会社が解散をするということは、会社の事業活動を解散日の時点を一区切りとして停止するということと同義です。


そこで、解散日の属する事業年度開始の日から解散日までの間の期間(解散事業年度)については、通常の事業年度と同様の確定申告書を作成し、税務署等に提出しなければなりません。
この解散確定申告書の提出期限は、解散日から2ヶ月以内となっています。

 

4)残余財産の確定と分配

社債権者の保護手続きが終わったら、清算人は次の様な手続きを行います。

 

① 現務の結了


解散時にまだ終わっていない残務を終了させます。
具体的には、在庫の売却、締結済の契約の履行などです。
取引先との契約の解除、従業員との雇用契約の解消などもここに含まれます。

 

② 債権の回収、債務の弁済、財産の換価処分


会社が消滅する為には、その資産と負債、純資産が0円になっている必要があります。

つまり、貸借対照表(B/S)が貸借共に0円になっていなければなりません。


その為、売掛金や貸付金などの債権については回収できるものを全て回収し、買掛金や借入金等の債務は全て支払・返済しなければなりません。
また、会社の有する財産について、現金に換価できるものは全て現金化します。

 

この過程で、例えば債務免除益や財産の売買益などの利益が出た場合には、そこに法人税が課税され、納税の義務が発生します。
清算手続きが長引いて1年以上になる場合には、解散日から1年ごとを事業年度とみなして、2ヶ月以内に申告を行わなければなりません。

 

③ 残余財産の分配


債権の回収と財産の換価が修了し、債務を全て弁済してもなお、手元に現金が残る場合には、これを株主に分配します。


分配の割合は、基本的に持ち株比率によります。
なお、② の段階で発生した納税額について、まだ納付が完了してない時には、その納付税額まで分配してしまわないようにしなければなりません。

 

5)清算の結了

 

残余財産が確定したら、それから1ヶ月以内に清算人は税務署に対して清算確定申告を行います。


上記のように、清算中に何らかの利益(所得)が発生した場合には、ここでそれに対応する税額の納付も行います。
清算確定申告においては通常の繰越欠損金控除の他に、期限切れとなっている欠損金の損金算入が認められることがあります。

ここは少し専門的な話になるのでここでは具体的な説明は割愛します。
実際に解散を行うこととなった時に、税務署や顧問税理士にご相談、確認をしてください。

 

残余財産の分配が完了したら、清算人は遅滞なく決算報告書を作成して、株主総会を開催して清算事務報告について承認を受けます。
この承認により、会社の法人格が正式に消滅することになります。

 

最後に、清算人は、精算に関する決算報告書の承認を受けた日から2週間以内に、法務局で清算結了登記を行います。
この時に、登録免許税2千円を支払う必要があります。

 

清算結了登記が完了したら、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場に生産結了の届出(異動届出書)の提出を行います。
添付書類として登記事項証明書(閉鎖事項全部証明書)が必要となります。

この提出を以って、会社の解散、消滅に関する全手続きが完了します。


<3> その他の事項

 

ここまでご説明してきたのは、株主総会を開催しての解散(「通常清算」)のケースでしたが、これは基本的に清算をした結果、プラスか、少なくともプラスマイナスゼロの残余財産が残ることが前提となった手続きになります。

 

つまり、残余財産がマイナスになりそうな時には「通常清算」手続きは選択できません。

そのような場合には、会社法第510条に規定される、「清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること」又は「債務超過の疑いがあること」という要件を満たす時に選ぶことのできる「特別清算」手続きというものもあります。
しかし、これは債権者による債権放棄があることを前提としており、債権者側の同意を得る必要もあります。
その為、中小企業にとっては、選択肢として現実味の薄いものだと言えるでしょう。

 

また、<1>で書いたように、債務超過の時には裁判所に破産手続きの開始を申し立てることもできますが、これも手間もかかれば費用もかかるという点から、中小企業が選択することはほとんど無いでしょう。

 

結局、財務状況等が悪くて通常清算の道を選べない中小企業は、特に手続きを行わずに休眠状態に入ることが多いのが実情となっています。
そのような会社は役員重任登記なども行わないでしょうから、最終的に、法務局によるみなし解散の登記によって、消滅することになります。


以上、株主会社を消滅させる時の一般的な流れ、手続きについての簡単な解説でした。
実際に会社の解散を行う際は、解散時、精算時の確定申告もありますので、できれば、税理士などの専門家にご相談されることをお勧めさせていただきます。