三鷹の税理士 平林 達夫 の日記

三鷹にある平林会計事務所の税理士、平林達夫です。税金に関する疑問、不安、不明事項、法人税務や確定申告、相続、新規起業に関する相談など、いつでもお気軽にご連絡ください。当事務所では、初回相談料は無料とさせていただいております。詳しくは、リンクの欄にあるホームページ等をご覧ください。

令和8年度税制改正

もともと仕事が集中する時期であることに加えて諸事情があった絡みで、確定申告から3月決算と、怒涛の勢いで仕事に追いまくられていました。

それもあって、なかなかこのブログに掲載する文章を書いているだけの余裕が無かったのですが……

 

さすがに6月になってようやく多少の落ち着きを得ることができました。

 

そこで今回は、遅まきながら令和8年度税制改正項目の中で、当事務所の主たる関与先である中小企業者等に適用されるもので、特に注目しておくべきことについて、2点、簡単に紹介したいと思います。


<1>「少額減価償却資産」損金算入特例の見直し

税務会計上、その取得価額が10万円以上である固定資産を購入した場合には、一旦固定資産として計上し、その後、耐用年数に応じた償却率で減価償却をすることとされています。

 

一方で、従来、中小企業者等に関しては30万円未満の取得価額である場合に限り、固定資産とせずに一括でその期の損金とすることができるという特例が設けられていました。

 

とはいえ、これは無制限に適用できるわけではありません。

まず、その事業者の従業員数が500名以下でなければならず、また適用できるのも年間で総額300万円以内という縛りもあります。

そそこに注意は必要ですが、つまりこれは中小の事業者が少額の試算を購入した場合に、その事業年度の利益を引き下げて税額負担を減らすことで、投資行動を後押ししようという狙いのある政策になります。

 

令和8年の改正では、これが、取得価額40万円未満の減価償却資産までOKと上限が引き上げられました。

 

その背景にはおそらく物価が高騰傾向なことがあるのでしょうけれども、ならば総額の枠も引き上げてくれればいいところが、こちらは年間300万円以内で変わっておりません。
また、適用の対象となる事業者が、従業員数500人以下から400人以下に変更となっており、ここはむしろ要件としては厳しくなっています。

 

総じて、この改正は中小企業者等にとってプラスに働くものなのかといえば、ちょっと微妙な部分も多いな、というところです。


<2> インボイス制度の「経過措置」に係る見直し

インボイス制度の導入に当たっては、従来の免税事業者が不利なことにならないように、2つの特例が設けられていました。
いわゆる「2割特例」と、インボイス番号を取得していない事業者からの課税仕入れに係る仕入税額控除の特例です。

 

(1) 「2割特例」

前者は、本来ならば免税事業者であるはずの事業者が、取引の都合などによってT番号を取得して課税事業者となっている時に、令和8年9月末日を含む課税期間までに限り、その事業年度に係る消費税の納付税額を、売り上げに係る消費税額の2割とすることができる、という規定です。

 

今回の改正では、この「2割特例」が適用可能である期限が過ぎても、個人事業主のみを対象として、令和9年分、令和10年分の2年間については売り上げに係る消費税の3割相当額を消費税の納税額として良いという、「3割特例」の規定が設けられました。


インボイス番号取得へのインセンティブとなり得る特例でしたから、もっと全面的に期限延長をしてくるかと思っていたのですけれども、これはちょっと意外です。

 

(2) 仕入税額控除の特例

インボイス制度では、T番号を有さない事業者からの課税仕入れに関しては原則的に仕入税額控除の対象とすることができません。

つまり、その事業者に支払った消費税の分だけ、納付すべき消費税の金額が増えてしまうことになります。

 

ただ、これまでは普通に仕入税額控除に含めることが出来ていたものが急に一切含められないとなってしまうのは、さすがに納税者への負担が大きすぎるという指摘が出てきました。

そこでその観点から、インボイス導入から3年間(~令和8年9月30日)までは支払う消費税の80%を、そこから更に3年間(令和8年10月~令和11年9月)までは50%を、それぞれ仕入税額控除の対象とできるという特例が設けられました。

 

今回の改正ではこれが延長され、現在の80%控除が令和8年9月30日で終わるのは変わらないものの、そこから2年間(令和8年10月~令和10年9月)までは70%、次の2年間(令和10年10月~令和12年9月)は50%、最後の1年(令和12年10月~令和13年9月)は30%の控除が可能、という規定に変更となりました。


個人的には、納税額ということを見れば、確かにプラス材料な改正ではあるのでそこは評価しhているのですけれども、事務処理をいたずらにややこしくしている側面もあるのは否めないかなと思っています。

 

 


以上が、今回説明をしておこうと思った、普段の会計処理などにも多く関わってくる、特に大きな改正点になります。

 

もちえおん、今回の改正はこれだけではありません。

他にも幾つも変更となったことがあります。

 

当事務所の関与先様に対しては各担当がご説明しているかと思いますが、特に顧問契約等を結んでいるわけでも無く、このブログをご覧いただいている読者様につきましては、「この改正についても書いてほしい」というような項目がありましたら、コメント欄等でリクエストをしてください。


前向きに検討させていただきます。

 

免税店制度の改正(リファンド方式)

空港の保税区域等ではなくても、今では街の中に普通に存在する、輸出物品販売場(以下、「免税店」)。


東京オリンピックを控えて国がその許可取得を推進していたこともあって、特に大都市では小規模事業者が営む小売店でも免税店の看板を掲げている店舗が多く見受けられます。

この免税店で海外からのツーリスト等(以下、「外国人旅行者等」)が物品を買う場合、それが日本国内で消費されず輸出の為に購入されていて、通常生活の用に供するものであれば、消費税を課されずに購入することができる、というのが、現在わが国で行われている免税販売のシステムです。


この時、販売する免税店の側はパスポートの提示を受けて購入者が外国人旅行者等であることを確認し、生活の用に供する為に購入するものであることを証する為の宣言に本人のサインをもらうことで、免税販売を行うことの正当性を担保することになります。

 

しかしこれは、良くも悪くも性善説に根差した運用であり、近年は制度の悪用も目立ってきていたのが実情です。

 

例えば、免税販売の対象となるものだとして税抜価格で購入した物品を、そのままメルカリ等のサイトにて税込価格で転売して消費税相当額分の利益を着服する等の違法行為です。

 

この状況を受けて、国税庁は令和7年度の税制改正で、輸出物品販売場制度の改正を行いました。

従来の制度から、リファンド方式への移行です。

 

この移行の実施日は令和8年11月からとなっているので、もうしばらく時間はあります。
しかし、この改正ではかなり抜本的なところから制度が変わりますので、現時点で既に免税店の許可を得ている事業者、あるいは、これから免税店の許可を得ようかと検討している事業者は、制度改正の内容を十分に理解したうえで、これから先の方針を決めていかなければなりません。

 

そこで今回は、このリファンド方式についての概要、現行制度と何が変わるのかについて、国税庁が令和7年4月に出したパンフレットに準拠しながら、簡単に説明をしたいと思います。

 

(1)リファンド方式の概要

まず、リファンド制度化においては、免税店が外国人旅行者等に対して販売する際の販売価格が、税抜から税込に変わります

つまり、私たちが日常の中で支払っているのと同額の購入額を販売の対価として受け取ることになります。


税抜価格で販売する従来方式とは、この時点で大きな違いがあります。

 

販売した免税店はこの時点で購入記録情報を入力、このデータは政府(国税庁)の免税販売管理システムに登録・保存されます。


この時、免税店が直接、免税販売管理システムに登録するのではなく、承認送受信事業者を利用して登録する場合もあります。

購入した外国人旅行者等は、購入日から90日以内(購入した日の翌日から90日目までの期間)に出国する際に、税関の確認を受けることになります。


この時、同じ領収単位で購入している(つまり、一度に購入・支払をしている)品物のうち、どれか一つでも、消費した、紛失した、あるいは転売した等により所有をしていなかった場合には、同時に購入している全ての物品について、免税措置の適用を受ける事ができない、とされています。

 

免税店が、外国人旅行者等に物品を販売した際の「購入記録情報」と税関が国外持ち出しを確認した際の「税関確認情の双方を保管することで、免税販売が確定することになります。

免税店を経営している事業者は、税関確認情報を取得後、物品を購入した外国人旅行者等に対し、消費税相当額を返金(リファンド)します。
送金された消費税相当額を外国人旅行者等が受け取ることで、免税販売が完結します。

 

(2)消費税相当額の送金方法

購入時にそもそも消費税を上乗せされない従来方式から、一旦消費税も含めて支払を行ったうえで、出国時の税関での手続きを経て支払っていた消費税相当額が返金される方式への変更というのが、この改正のキモになるのですが、では、その返金はどのように行われるのでしょうか。

 

販売を行った免税店事業者が1つ1つ返金をするというのは、それに要する労力の観点等から、少々現実性が薄いと考えられます。

実務的には、返金事業者に返金業務を委託する形になるでしょう。

 

免税店事業者が返金業務だけを返金事業者に委託する、購入記録情報の登録を委託した承認送受信事業者が返金事業者を兼任する、承認送受信事業者と送金事業者をそれぞれ別個に契約し業務委託する、の3つのケースが想定されているようです。

 

(3)その他の改正点

リファンド方式の移行に伴い一番大きく変わるのは上記の、一旦は税込みで販売したうえで税関での承認を経て返金が実施される、という流れですが、それ以外にも改正される事項は複数存在しています。

 

免税対象物品の用途が問われなくなったり、金額の上限がなくなったりといった範囲の見直し、購入時に免税購入対象者であるか否かの確認をする際に提示を受ける書類の変更など様々なのですが、これを1つ1つ説明しているとあまりに長くなりすぎるので、今回は割愛させていただきます。


どこかのタイミングで改めてこのブログでも解説をするかもしれませんが、さしあたり、今すぐにそこも詳しく知りたいという方は、国税庁の「リファンド方式特設サイト」等をご覧ください。

www.nta.go.jp

 

ひとまずリーフレットで確認を、という場合は、以下のリンクになります。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/pdf/0025003-110_01.pdf

 

(4)税務会計処理

リファンド方式の場合の税務会計処理について説明します。

 

従来であれば販売の時点で輸出免税処理をしていたところ、今後は、販売の時点では普通の課税売上として処理をすることになります。

そのうえで、外国人旅行者等によって税関確認情報の取得が成されれば、これを輸出免税取引に振り替える。

 

具体的には、課税売上をマイナスして、輸出免税をプラスするわけです。

 

なお、この処理は税関確認情報の取得の都度やっても、〇〇月分のように一定期間の該当取引をまとめて処理するのでも構いません。

同一期中に課税売上と振替が発生するのであれば簡便的に課税売上にマイナス仕訳を計上すればシンプルですが、決算日をまたぐケースも、当然に想定されます。

 

ですので、リファンド方式の適用を受ける事になった売上については、課税売上に関わる対価の返還等として会計入力をすることになるでしょう。

 

本来的には納付する必要の無い消費税を一度納付し、翌年に還付を受ける形になりますから、一時的に資金繰りを圧迫するかもしれませんが、そこはやむを得ないと受け入れるしかなさそうです。

 

 

贈与税申告から漏れた贈与財産の相続財産への加算

このブログでも改正時にお知らせしましたし、既に皆さんご存じかもしれませんが、通常の暦年贈与により財産を取得している場合において、贈与者が亡くなった際の相続税の生前贈与加算が適用される期間が、令和6年分の贈与より、「相続発生前3年以内に行われた贈与」から、「同7年以内に行われた贈与」に拡大されました(相続税法第19条第1項)。

hirabayashikaikei.hatenadiary.jp


その一方で、相続時精算課税制度にも毎年の基礎控除の110万円が導入され(相続税法第21条の11の2第1項、租税特別措置法第70条の3の2)、かつ、こちらについては基礎控除額以下の贈与額であれば相続財産には加算されない(相続税法第21条の15第1項)ことから、暦年課税ではなく、相続時精算課税を積極的に利用する動きも出てきています。

この結果、相続が発生した際の課税対象となる相続財産及びみなし相続財産の確認、評価額等の算出において、亡くなられた被相続人の生前に、相続人や受遺者に対して行われた贈与の有無の確認作業は、これまで以上に重要性を増していると言ってもいいでしょう。

 

この時、生前にどれだけの贈与が行われていたのかを調べる最重要資料となるのが、各年に提出された贈与税の申告書となります。

ところで、贈与税申告書に記載された贈与財産の金額に誤りがあることが後から発覚した場合には、どうなるのでしょうか。

 

<1>     修正・更正・決定の除斥期間

贈与者がまだ亡くなっておらず、相続が発生していないのであれば、暦年贈与、相続時精算課税ともに、贈与税の申告について、納税者による修正申告・更正の請求の提出又は課税当局による更正・決定が行われることになります。

 

では、贈与者が亡くなって相続が発生した時点で、贈与税申告の誤りが発見された場合は、どうなるのでしょう。

この場合は、理屈から言うと贈与税の申告を修正・更正して、しかる後に相続財産への加算を行うという流れになるのでしょうが、どのみち相続税で再計算を行うのですから、相続税額計算上で修正することで済ませるという形もあるのではないか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、これは誤った判断です。

 

贈与税の申告をし忘れていた、あるいは申告した贈与額が少なかったような時は、本来納めるべきだった税額と実際に収めていた税額との差額に対する利息相当である延滞税や、過少申告・無申告であったことに対する加算税が発生します。

そのことからも当然に、贈与税の期限後申告(修正申告、更正の請求)をしなければならない、ということになります。

これは何も国税の調査等で発覚した時だけのことでなく、相続税の申告準備に入ったところで自ら発見した場合も同じことです。

むしろ自主修正申告をした場合と、調査を受けて修正申告をした場合とでは、加算税の率が大きく異なりますので、その点にも注意が必要でしょう。

 

なお、課税当局側の更正決定等については、それが可能な期間が法律上定まっています。

この、権限が消滅するまでの期間のことを「除斥期間」といい、原則的には5年、贈与税については6年、意図的な脱税行為などの不正があった場合は7年と規定されています(国税通則法第70条第1項及び第5項、相続税法第37条第1項)。

仮にそれよりも前の年にも漏れがあったとしても、その部分については訂正等を行う必要が無い、というか、行えないというのが、現在の規定です。

 

一方、納税者の側が修正申告書提出や更正の請求ができる期間ですが、後者については国税通則法第23条第1項が法定申告期限から5年以内と規定しているものの、実は前者については明文化された期限の規定は存在しません。

が、これについては実は裁判事例が存在していて、国税側の徴収権が除斥期間の規定によって原則的に法定申告期限から5年で時効により消滅する以上は、納税者側が修正申告書を提出する権利もそれに準じて制限されるというのが通説となっています。

ここも少し深掘りしだすと税法研究・事例研究的には面白いところなのですが、専門的になりすぎますので、今回は割愛します。

気になるという方は、とりあえず中央大学法科大学院の機関誌『中央ロー・ジャーナル』第15巻第1号(2018)の酒井克彦先生の論文「期限後申告書の提出期限 ―国税の徴収権の消滅や除斥期間からのアプローチ―」を読んでみられるのもいいかと思います。

 

<2>     加算される財産の範囲

相続が発生し、暦年課税や相続時精算課税を利用して相続人・受遺者に贈与された財産をみなし相続財産として加算する時に、対象となる期間の贈与税申告書に誤りがあって、申告から漏れている贈与財産があった場合、加算額はどうなるのか。

 

このうち、暦年課税については国税の更正・決定に係る徴収権の時効は前述のように最大で7年とされているので、暦年課税の加算期間と一致しますから、大きな問題にはならないかもしれません。

もちろん、7年となるのは意図的な脱税行為があった場合等に限られるわけですから、期限ギリギリのところに誤りがあったケースでの取扱いがどうなるのか等、(今はまだ生前贈与加算の期間延長が成されて間もないので、今後の事例を注意深く見守る必要もありそうです)まだ分からないところあるかもしれません。

 

では、相続時精算課税についてはどうなのでしょうか。

 

こちらは、暦年課税のような年数の制限がありません。「相続時精算課税選択届出書」を提出し適用させた年から特定贈与者が亡くなるまでに行われた贈与の全てが、相続税の加算対象となります。

その為、相続が発生したら、相続人の中に相続時精算課税の適用を受けている者がいないかをチェックし、いた場合には過去の贈与税申告書を揃えて、加算額の確認を行うという作業が必要になります。

そのような制度ですので、当然、その贈与行われたのが5年前だろうと10年前だろうと20年前だろうと、加算されるものはきっちりと加算されることになります。

 

これを規定しているのが、相続税法第25条の15第1項。

 

<相続時精算課税に関わる相続税額>
特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるもの(第二十一条の二第一項から第三項まで、第二十一条の三、第二十一条の四及び第二十一条の十の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。)の価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額を相続税の課税価格に加算した価額をもつて、相続税の課税価格とする。
(相続税法第25条の15第1項)

 

なお、長くなるので詳述はいたしませんが、既に除斥期間が経過してしまっている相続時精算課税適用の贈与税申告書に記載漏れとなっていた贈与財産が、相続財産に加算されるか否かを巡り、この条文の解釈が争点になった裁判例もあります。

 

その事例で納税者は、この条文の「当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る」という記述を根拠として「贈与税の申告書に記載されていないものは相続財産に加算されない」と主張しました。

しかし、裁判所の判決はこれを否定。

 

ポイントとなるのは、条文の記述が「算入される」となっていて、「算入された」ではない、ということ。

これが後者であったならば、納税者(又は課税当局)によって実際に申告された贈与財産のみが加算されるという解釈も成り立つのですが、しかし、実際の条文は前者。

この場合は、「(贈与税の申告をする場合に相続税の規定により課税価格に)算入されるもの」が加算されると読み解くのが正しい解釈であり、ここにおいて納税者自身の申告の有無や税務署長による更正決定等の有無は問われないということです。

妥当な判決だと思います。

 


以上、今回のエントリーの結論としては、相続が発生した際に、被相続人から相続人等に対して行われた過去の贈与について、贈与税申告の誤りや漏れがあった際には、修正申告や更正の請求をすること、そもそも毎年の贈与税の申告の時点で間違えないように気を付けること、ということになるでしょうか。

 

「相続人不在の相続」と「相続財産法人」

このブログでは、開設してからこれまで、複数回を使って相続税について具体的な解説を行ってきました。

それは、相続財産を承継できる権利を持つのがどのような人かという説明だったり、相続税が課される相続財産の金額はどのように評価されるのかという評価方法の説明だったり、実際に相続が発生した際にどうやって納付すべき税金が算出されるのかという税額計算方法の説明だったりするわけですが、今回は、相続財産を受け取る相手が存在しない場合に、どのようなことになるのかを説明していきたいと思います。

 

税理士として、相続対策や相続税申告に関する相談や質問を受ける事は、よくあることです。

そこで時々聞かれるのが、被相続人が死亡し相続が発生した時点において、法定相続人が存在しない、あるいは相続権を持つ人が全て相続放棄を行って、被相続人の財産負債を受け継ごうという人がいない場合には、その相続財産はどうなってしまうのですか、ということ。

 

そんな時に私はよく、「そういう財産は国に召し上げられることになっています」と答えています。

 

そういう冗談めかす言い方がともかくとしても、引き受け手がない場合には、死亡した者が所有していた財産が国庫に帰属することになるというのが、定められているルールです。

とはいえ、何の手続きも踏まずにいきなり国庫に入ってしまうわけではありません。

 

まず、相続人がいない状態とは、前述のように法定相続人がいないか全員が相続放棄をしていて、かつ、被相続人が遺言書などで財産の受け取り手・寄贈先などの指定もしていなかった場合になります。

このような場合は、まず、相続財産法人が成立することになります。

 

この「相続財産法人」なのですが、どうしても印象的に「法人」という響きに引きずられて、通常の株式会社や合同会社のように、出資者がいて、代表者がいて、設立には登記が必要で、というような形を想像してしまいがちですよね。

確かに、相続財産法人も民法上の法人格を持つことから、法人税法に規定する普通法人に該当するとされています。

つまり、法人税の納税義務が存在するのは、株式会社や合同会社と違いがありません。

 

一方で、相続財産法人は相続人が不在となった場合に当然に成立するものであって、その設立に登記等の手続きは必要ありません。

この点は、株式会社や合同会社とは違いますね。

 

相続人がいないからといって、被相続人の財産を浮かせたままで放置していることもできないから、その財産を法人化する、いわば法人とみなすような措置をするというわけで、これを「法人として擬制する」という表現を使う方もいらっしゃいます。

法律としては、民法の第951条~第959条にこの相続財産法人に関係することは規定されています。例えば、その成立について規定している第951条は、以下のような条文となっています。

 

<相続財産法人の成立>
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(民法第951条)

 

財産を法人とする、つまり財産という物に法的に人格を認めるという書き方には個人的に違和感がありますが……

あくまでこれは法的取り扱い上のことですし、だからこそ、「法人として擬制」という表現も出てくるわけですね。

 

こうして成立する相続財産法人ですが、当然ですけれども財産にはそれ自身を処分したり国に寄贈したりする手続きを行うことは出来ません。

そこで、受取人のいない相続財産や債務について、弁済すべきものを弁済し、処分すべきものを処分する責任者が必要となってきます。

それが「相続財産清算人」で、利害関係人や検察官が家庭裁判所に選任申立を行うことで、裁判所の審理を経て専任されます。

申立てに際しては被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍謄本)その他の書類を添付しなければなりません。

また、申立てに要する費用は、それ等の添付書類の取得費用のほか、収入印紙800円と連絡用の郵便切手代、官報への公告掲載料金等になります。

 

<相続財産の清算人の選任>
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
(民法第952条第1項)

 

利害関係人とは、債権者や相続放棄をした法定相続人、相続財産である不動産が所在する自治体など、相続財産の管理・処分が行われないと不利益を被ることになる者のことを言い、ここに、「特別縁故者」も含まれます。

 

「特別縁故者」とは亡くなった被相続人と同居をしていた者(内縁関係など)や生活の世話をしていた者その他であり、この「特別縁故者」が、相続人が存在しない相続財産についての権利を有することは、民法第958条の2第1項に、以下のように規定されています。

 

<特別縁故者に対する相続財産の分与>
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
(民法第958条の2第1項)

 

あくまで本人からの請求があった場合に限られますが、他に法的な相続権を有する者がいない場合には、特別縁故者が相続財産に対して権利を有することがお分かりいただけるかと思います。

 

相続財産清算人は、専任されると公告を行って、相続人を捜索し、受遺者や債権者の名乗り出を求めますが、一定期間が経過してもこれ等の者が見つからない場合には、再度設けられる期間内に請求をしてきた特別縁故者への財産分与が行われます。

そして、特別縁故者からの請求が無かった、あるいは特別縁故者へ財産を与えてもなお相続財産に残額が存在する場合には、残された相続財産は、国庫に寄贈されます。

 

冒頭にも書いたように、被相続人が所有していた相続財産について、それを引き継ぐべき相続人等が不在の場合、その財産は最終的に「国に召し上げられる」のですが、そこに至るまでには、今回説明したような過程を経ることにわけですね。

 

なお、相続財産清算人はボランティアではないので、当然にそこには報酬の支払いが発生します。

これは相続財産法人が、その財産から支払うことになりますが、相続財産清算人への報酬額を含む(相続財産の管理・処分を行う為に必要となる)費用が相続財産だけでは不足しそうな場合には、相続財産清算人の選任を申立てする際に予納金を納付しなければならないこともあります。

これが高額になる場合には、相続財産清算人の申立てを見送ることも普通に考えられます。

その場合、相続財産に含まれる空き家が放置されたことで倒壊寸前になり近隣に危険が及びかねないとなると、自治体が予納金を公費で負担して相続財産清算人の選任申立を行わざるを得ないこともありえます。

 

私も他人事では無かったりするのですが、今後、独居老人の孤独死が多く発生することが予想される以上は、最後のケースも増加が想定されることになりますが、それでいいのかどうか、制度を改正する必要があるのかは、慎重な検討が求められることになるかもしれませんね。

 

所得税確定申告と特例の一覧

令和7年分の申告所得税については、確定申告の受付期間が既に2月16日(月)より始まっています。

 

確定申告書の作成に当たっては、納付すべき税額が極力少なくなるような形にしたいというのが、誰しもの共通する望みでしょう。

その為には、まず、書類作成に当たっては最新の注意を払って、計算ミスのようなものは確実に回避しましょう。

その上で、適切かつ適正な計算を行って、税金を、1円も払い過ぎずに、同時に1円の納付漏れも無く、期日までに納めるようでなければなりません。

 

当然ですが、意図的な課税逃れ、売上隠し、架空経費計上のようなことは、絶対にしてはいけません。

それは、課税の公平を歪めることになりますし、何よりも脱税に該当し、根本的に卑劣で唾棄すべき行為であると言えます。

 

一方で、豪放な節税策であれば、それは当然に活用できる限り最大限に利用すべきです。

所得税の確定申告書作成、税額計算の時点で使える節税策といえば、各種特例の適用でしょう。

 

ただ、どのような時にどのような特例があるのか、その適用要件はどういうものなのか、というようなことは、あまりきちんと広報されているとは言えません。

それは国税庁の怠慢とも考えられるかもしれませんけれど、とはいえ、様々な特例の全てをTVCMやポスター等で、国民のだれもが認識し理解できるように周知を図るというのは、現実問題としてはかなり難しいことだろうなとも、思うのです。

通常の生活の中では使わない、日常的には接点が無いような租税計算の特例規定には、納税者の側も普段から注意して知識を得ておいてくださいと言われたとしても無茶でしょうし、理想はともあれ、これはなかなか解決の難しい問題です。

 

それでも、いざ実際に確定申告書を作成しなければならないとなった時には、自分が適用を受けられそうな特例の有無が簡単に調べられるようには、なっていてほしいものですよね。

そのうえで、税務署や税理士等に、自分がその特例を使えるか否か、特例の適用を受ける場合に必要になる添付書類にどのようなものがあるのか等を確認するというのが、落としどころとしては妥当な流れでしょう。

 

この時に役に立つのが、国税庁HP内の確定申告書作成コーナーにある、「特例適用条文一覧」のページです。

 

https://www.keisan.nta.go.jp/r1yokuaru/ocat3/ocat32/cid1018.html

 

項目としては、国・地方公共団体等から補償金を受け取った場合や、マイホームを譲渡して利益や損失があった場合等について、どのような特例の適用が考えられるかが、リスト化されています。

 

個々の特例の説明文もリンクと共に記載されていますが……

説明が、一般の納税者にはやや分かりにくいかもしれません。

これでも、条文そのままを掲載するよりはかなり親切な形になっていますが、皆さんの個別事情に合わせて、詳細な説明を受けたいと言うことであれば、やはり、税務署等に相談するしかないでしょう。

 

結局、確定申告については、なるべく早く準備や確認作業を始め、不明点については早急に時間を確保して専門家への相談もすべきだ、ということになるでしょうか。