三鷹の税理士 平林 達夫 の日記

三鷹にある平林会計事務所の税理士、平林達夫です。税金に関する疑問、不安、不明事項、法人税務や確定申告、相続、新規起業に関する相談など、いつでもお気軽にご連絡ください。当事務所では、初回相談料は無料とさせていただいております。詳しくは、リンクの欄にあるホームページ等をご覧ください。

交通系ICカードの経理処理

ここ数年で、一気にキャッシュレス決済が一般的になってきています。

会社の経費支出なども、現金で支払をしたものだけでなく、様々なキャッシュレス決済手段で支払いを行ったものが増えていることでしょう。

そのようなキャッシュレス決済を使った場合に、税法上(あるいは会計上)で保存を求められる証拠書類は何か。

 

2026年8月10日のエントリーでは、その点についてクレジットカードを主な例として説明を行いました。

hirabayashikaikei.hatenadiary.jp

 

その際に最後に触れた、SuicaやPasmo等の交通系ICカードを利用した決済の注意点について、今回は書いてみようと思います。


<1> 交通系ICカードの概要

ざっと簡単に調べてみたところ、日本で交通系ICカードが初登場したのは2001年、JR東日本でのSuicaの運用開始になります。


なまじ昔を知っていると、もうそんなに経ったのかと驚かされますが、誕生から四半世紀以上が経過する中で、後発の交通系ICカードとの相互利用なども始まって利用者の利便性が拡大し、現在に至っています。

この間の全国各地の動向とか、相互利用拡大の流れとか、この辺りの歴史を追っていってみたり、クレジットカードやQRコード決済でのタッチ乗車も始まっている今後の展望に関して各所で語られている様々な分析を調べてみたりというようなことも面白そうなのですが……。

今回の本題からは外れてしまうので、ざっくりと書くに留めさせていただきます。

 

当初は電車代の決済手段として誕生した交通系ICカード。

駅構内での買い物にも使えるようになったり、駅内の商店でも使えるようになったり、「エキナカ」「エキチカ」での利用者拡大を行った後、駅を離れて市中の様々な商店等でも交通系ICカードを使った決済ができるようになるなど、その利用範囲はどんどん拡大してきました。

 

一方で、2024年に熊本市のバスや電車を運行する5社が読取機器の更新費用が多額に上ること等を理由に全国交通系ICカードによる決済を廃止することとなったのはなかなか衝撃度の大きなニュースでした。

 

なお、熊本市のケースとは理由は異なるのですけれども、私の住む国分寺市のコミュニティーバスも運行委託会社の変更で交通系ICカードが使えなくなった時期があったのですが、おそらく利用者からの苦情があったのでしょう、しばらくしたら再び交通系ICカードでの決済が復活しています。

以上のことから分かるのは、交通系ICカードが日々の生活における決済手段の1つとしてすっかり浸透していることです。

 

電車代やバス代といった公共交通機関の支払以外でも、レジ等で交通系ICカードによる支払いを選択する人は珍しくなくなりました(最近はQRコードでの決済の方が増えている感もありますが)。

そんな状況を前提として、次に、交通系ICカードの会計処理を考えてみます。


<2> 交通系ICカードの会計処理

実務上、交通系ICカードに関しては幾つかの処理方法が考えられます。

交通系ICカードは一部を除き原則的にプリペイド方式ですので、事前に一定額のチャージを行う必要があります。

つまり、実際の利用よりも先に金銭の支出が生じるわけです。

 

それに対して、どのような会計処理を行うべきか。
いくつかのパターンが考えられます。

 

① 一番シンプルなのが、そのチャージの都度、チャージされた金額を「交通費」等の科目に計上して損金処理を行うこと。

キャッシュアウトが行われると同時に費用計上がされるので、管理上、一番楽なのはこれでしょう。

ただし、後述するように、これには費用計上時期や、使用する勘定科目など、いくつかの問題が存在します。

 

② 次に、チャージの時点では「前払金」等の勘定科目で処理を行い、次のチャージ時等に利用履歴を提出してもらい、その内容に応じて仕訳を計上する方法。

プリペイドという形式から言えば、これが一番会計の原則に即した処理なのかもしれません。

ただ、前払になっているチャージを「誰が」「いつ」行ったものなのか個別に管理し、利用履歴の提出を受けて消込をしていくという作業は非常に手間のかかるものですから、現実的ではない方法だと言えるでしょう。

 

③ 最後に、交通系ICカードのチャージ時には、まったくの経理処理を行わないという方法。

ICカードを使って交通機関に乗る、あるいは何らかの物品を購入する、といったような行為が生じたら、レシート類やそこでの支出額を記載した精算書をもとに、現金等で生産するというやり方です。

これは通常の現金経費の精算と同じことですから、取り立てて何がどうということにもならないかと思われますが、社員の側からすると一時的に会社の経費を立て替えていることになりますので、その点に不満が出てくる可能性はあります。

 

それぞれ一長一短あり、というところですね。

 

私が知っている範囲内でのことにはなりますが、出張等が頻繁に行われるような会社、外回りの営業活動が非常に多いような会社を除く一般的な中小企業では、①の処理を選択していることが一定数存在するという印象があります。

実際の支出時とのズレについては、チャージ額精算の頻度、全体の経費に占めるチャージ額の比率の低さなどから、「重要性の原則」に基づいて考えないことにして、簡易的な処理を行うということは、間違いとは言えません。

 

ここで一番問題になるのは、交通系ICカードにチャージされた金額が、実際にはどのように使われたものなのかが、この処理では反映されないというところになります。

その点を、先日某社の税務調査で指摘されました。


<3> 税務調査等での指摘事項

当然ながら詳細は書くことができないのですが、交通系ICカードについて、チャージ時に全額を「交通費」で処理をしていた会社に対し、税務署側が指摘したのは、本当にこれは交通費として使われているのか、という使用内容についてでした。


チャージ時に損金算入をしてしまうと、実際には決算期が変わった翌期にしようをされた経費も先んじて損金処理をされてしまうのではないかという、いわゆる「期ズレ」の件については特に問題視はされていません。

 

特に税務署側が気にしたのが、チャージした金額が本当に「交通費」として使われたのか、ということ。

損金算入額に制限がある「交際費」に該当するようなものがあったのか、ということもあるでしょうが、何よりも彼らが引っ掛かっていたのは、そこに個人的な支出が混ざっていないか、ということでした。

 

<1>で書いたように、今や交通系ICカードを決済に使える店はあちこちに数多く存在しています。

チャージ時の経費計上を行っている場合に、その中に事業では使わない私的な買い物が紛れていないかどうかをきちんと把握できているのか、そこが今後は問われてくるでしょう。

 

この税務署からの指摘は、以前からチャージ時の経費計上処理の弱みだと思っていたこともあり、いずれどこかで言われる事だろうと予想はしていた内容でしたから、そこまでこちらも驚きはありませんでした。

とはいえ、いよいよ国税側が交通系ICカードの会計処理まで気にしだしたというのも(まだ実例としては1件だけとはいえ)事実でありますし、今後も様々な顧問先での税務調査等のたびにここに指摘を受け続けるのも、どうかという話です。

 

チャージ時の「交通費」計上が正しい処理であると立証する為には、交通系ICカードの利用履歴が必要になります。

これは、駅にある券売機等か、あるいはモバイルで使用している場合にはアプリからも確認と印刷をすることができます。

定期的に履歴を印刷して、確かに電車やバスの支払にしか使っていないことを示せれば、問題はありません。

 

また、仮に、交通系ICカードで何らかの物品購入などを行った際には、必ず、その内容の分かるレシートあるいは領収証を受け取り、経理に提出するようにしてください。

それを受けて、経理がしっかりと勘定科目の振替仕訳を行っているのであれば、それはそれで大きな問題にはならないでしょう(もちろん、個人的な利用についてはその使用金額を本人からしっかりと徴収し返金という形をとらなければなりません)。

これが面倒くさくて嫌だということであれば、<2>に挙げた ② か ③ の処理方法を採用することが、残された選択肢です。

 

一般的な事業者の、経理全体、会計全体における影響度合いから考えると、かなり細かいところの話にはなるのですけれども……。

課税当局からの余計な突っ込みどころを残さない、適正な経理処理を行うにあたり、交通系ICカードの経理処理についても、どれが自分達にとって最も良い方法なのか、検討のうえで、方針を決めていただければ。

 

そう思って、今回のエントリーを書かせていただきました。

 

決済にカード等を利用した場合の保存書類等

日常生活において現金での支払をするということが、少なくなってきている。

というか、場合によってはほとんど無くなっている人もいらっしゃるような時代です。


私自身は、自分がどれくらい支出をしているのかを感覚的にも把握しておけるということもあってキャッシュで支払う方が好きですし、実際、ネット通販を利用する時などを除けば、ほとんどの決済を現金で行っています。

が、世の中ではキャッシュレス決済がほぼスタンダードになりつつあると言ってもいいでしょう。

 

それを踏まえて、事業用の支出についてキャッシュレス決済を行った際の、注意点を今回はお話しさせていただきます。

まずは、会計入力に関する基本的な事項を確認しましょう。


<1> 証憑書類の保存義務

税務上も会計上も、仕入あるいは経費などとして認められる為には、その証拠書類として領収証・レシートが必要となってきます。

この点について所得税法も法人税法も同様の規定を有しているのですが、ここでは後者を実際に確認してみましょう。

 

まずは、帳簿書類の保存義務を規定している条文です。

 

<青色申告法人の帳簿書類>
第121条第1項(青色申告)の承認を受けている内国法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。
(法人税法第126条)

 

これだけでは少々漠然としていますよね。
具体的な帳簿書類の具体的範囲や保存期間については、法人税法の本法ではなく、施行規則の方に規定されています。

 

<帳簿書類の整理保存>
 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
一 第五十四条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
二 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
(法人税法施行規則第59条)

 

 

保存対象となるのはいわゆる帳簿だけでなく、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書なども含まれていることが記載されています。

ここでいう「起算日」というのは、原則として、その保存書類に係る取引の属する事業年度の終了の日から2ヶ月経過した日のことを指します。

法律的な言い回しは分かりにくいので敢えて単純化して説明すると、その事業年度の決算申告&納税の期限から7年間の保存が義務付けられている、ということだと覚えておいてください。


<2> 帳簿への記載内容

実務では、上記の規定などにしたがって保存される各種の書類をもとにして、実際に会計システムなどに仕訳を入力していきます。

その際にどのような項目を記載(入力)しなければならないかという点については、消費税法第30条第8項第1号の規定を参照するといいでしょう。


というのも、ここに記載された項目が全て仕訳に記載されていることが消費税の仕入税額控除の対象となる為の要件であり、これを守らなければ消費税の納税額がその分だけ増えてしまうからです。

誰も無駄に税金を多く納めたいとは思っていない以上、この規定を守った仕訳を起票するのは、むしろ必須です。

 

<仕入れに係る消費税額の控除>
 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(略)
ニ 課税仕入れに係る支払対価の額(略)
(消費税法第30条第8項第1号)

 

なお、当事務所が推奨している㈱TKCの会計ソフトの場合は、インボイス制度が導入されて以後は上記4項目に加えて、適格請求書発行事業者登録番号(いわゆるT番号)も記載されるようなシステム設計となっています。

 

会計データの仕訳起票に際しては、「取引先名」「日付」「取引内容」「取引金額」を漏れなく入力すること。

その入力のもととなった領収書その他の会計帳簿類は、7年間保存しておかなければならないこと。

この2点が、支出した仕入・経費等に係る会計入力の基本的事項となります。


<3> カード等を利用した場合の会計資料

ここまで説明してきた内容は会計取引の全てに関係するものであり、当然ですが、現金で支払うようなものだけでなく、クレジットカードや電子マネー等の現金以外の方法で決済したものにも適用されます。

では、その際に保存しなければならない書類、取引内容の証明となる書類とは、どのようなものでしょうか。

 

先にご説明したように、その書類には会計仕訳の入力の基になった「取引先名」「日付」「取引内容」「取引金額」(及び、T番号)といった要素が記載されていなければなりません。

 

例えば、毎月カード会社から発行する利用明細(支払明細)はどうでしょう。

 

そこには確かに、一定期間に行われたカード決済について、日付と相手先と金額は書かれています。

しかし、それはあくまでもその回に引落等が行われるカード利用取引の一覧であり、具体的な取引内容やT番号までの記載はありません。

また、この利用明細を発行したのはあくまで決済に使ったカード会社であって、その取引の相手方が発行したものでは無いですよね。

つまり、法人税法施行規則第59条第3号の「相手方から受け取つた」という部分を満たさないですから、取引の保存書類としては認められないことになります。

 

では、レジなどでカード決済をした際に発行される「クレジットカード利用控え」だと、どうなるのでしょうか。

 

これに記載されている事項はカード会社や決済に使った端末によって異なるので私も全てを把握しているわけではありませんが、基本的に、「取引日」と「相手先」と「金額」はあっても、何を買ったかの明細などの「取引内容」は記載されていませんし、T番号も無いことがほとんどです。

また、この「利用控え」は厳密に言うとあくまでもカード決済の端末を提供している決済会社が発行したものですから、こちらも法人税法施行規則第59条第3号は満たさないと考えるべきでしょう。

 

以上より分かるのは、カードや電子マネーなどを使って決済をしたとしても、結局は現金払の時と同様に、取引の相手先が発行した領収証等が保存書類となってくるということです。

利用明細(支払明細)や利用控えは、それを補足する為の補助資料だと認識しておくのが無難です。

 

結論を言うと、カードや電子マネーなどで決済を行った場合でも、現金決済と同様にレシートや領収書を受け取って保存してください。

それが、税務調査等でのトラブルを回避する一番簡単で、かつ手堅い方法です。

ここを怠ると、最悪の場合、「消費税法第30条第8項第1号」の違反として、消費税計算時の仕入税額控除対象への算入が否認される恐れがあります。

 


ちなみに、SuicaやPasmo等の交通系ICカードを利用した決済についても、最近の課税当局の動向を踏まえた注意点があるのですが、それはそれで長くなりますので、改めて個別のエントリーをなるべく早めに公開させていただくことにいたします。

 

 

士業への報酬支払いと源泉所得税

当事務所のような税理士事務所を始め、弁護士、司法書士、公認会計士、社会保険労務士、弁理士などといった、いわゆる「士業」の事業者に対し報酬を支払うことは、事業を営んでいると、そんなに珍しいことではなかろうと思います。


当事務所が関与しているような中小事業者ですと、弁護士や公認会計士に業務を依頼することはあまり無いかもしれません。

特許権、実用新案権、意匠権及び商標権の4つからなる「産業財産権」を自社で所有するような仕事でなければ、弁理士に仕事を依頼することも無いでしょう。

それでも、それこそ日々の会計や税務申告のために私のような税理士と顧問契約を締結する、役員登記その他登記関係で司法書士に手続きを頼む、労務総務関係で社会保険労務士に相談をする、というようなことは、普通にあるのではないでしょうか。

 

そのように仕事を依頼した士業の先生から届く請求書を、しっかりと見てみたことがある、という人はどれくらいいらっしゃるでしょう。

 

もちろん、経理課にて働いているような人であれば、何度も見たことがある、とおっしゃると思います。

しかし、そうではない一般会社員の人などは、例えば「毎月税理士が会社に訪問してきて帳簿類のチェックをした後に社長と話をしている」というような事実は認識していたとしても、ではその対価、この場合は顧問料等ですが、それがどのような計算で請求されているのか、気にしたことも無いのではないでしょうか。

 

ここで、以降の話を分かりやすくする為に、税理士である私が法人A社(社員数20名程度の国内法人)と、システム利用料込で月額4万円の顧問契約を結んでいるということにしてみましょう。

 

月次の顧問料について当事務所はファクタリング会社を利用して顧問先の銀行口座から引き落としをさせていただいています。
また、当事務所は消費税の課税事業者ですので、A社から頂く顧問料は4万円に消費税等を加算した44,000円となるわけで、では、この金額が毎月の引き落とし額ということになるのだろうと思われますよね。
ところが、実際に口座から毎月引き落とされている金額は、44,000円ではなく、39,916円なのです。

 

この差額、4,084円は何なのか。

 

結論から書きますと、これは、税理士に対して支払う報酬に係る源泉所得税になります。

こう書いてもあまりピンと来ていない人には、会社が社員に対して支給する給与から所得税が差し引かれているのと基本的に同じものである、と言えば、あるいは「ああ、あれか」と理解してもらえるでしょうか。

イメージとしては、士業の人に対して定期的に支払うような役務の対価については、社員に対する給与と同様に、それを支払う事業者の側が支払額の一部を所得税として予め預かっておき、別途それを国に対して納付するということです。

 

なお、これはあくまでも「所得税」の預りなので、その支払先が法人(税理士法人、社会保険労務士法人、弁護士法人など)である場合には源泉徴収の必要はありません。

法人税について、所得税同様の源泉徴収制度というものは法規程上に存在していないからです。

また、支払う側が源泉徴収義務者でない場合には支払報酬額から源泉徴収を行う義務は存在しませんし、仮に預かったとしても納付する方法がありませんので、上記のようなケースであれば、総額の44,000円を請求し、お支払いいただくことになります。

 

このことを規定しているのは、所得税法第204条第1項第2号です。

念の為、条文を確認してみましょう。

 

<報酬、料金、契約金又は賞金に係る源泉徴収義務>
 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
二 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
(所得税法第204条第1項第2号)

 

源泉徴収する所得税額ですが、通常であれば先方から発行される請求書等にその金額は記載されているはずです。

 

ただ、中には本来であれば源泉徴収をしなければならないような報酬支払に係る請求書であるにも関わらず、源泉税額控除の記載が無いものが送られてくることもあるでしょう。

そういう場合でも、支払う側は自主的に源泉所得税を徴収・納付をしないと、それは所得税法違反行為であるということになってしまいます。

(報酬支払に係る所得税の源泉徴収税率は、支払額のうち100万円以下の部分については、10.21%、100万円を超える部分については20.42%です)

 

また、源泉徴収税額については税込の支払額で計算することが基本ですが、請求書等で消費税部分が区分記載されているのであれば、税抜金額に上記税率を乗じた額を源泉徴収することしても問題はありません。

上記の例でいえば、顧問報酬44,000円(うち消費税4,000円)ということが契約書・請求書に明記されていますし、金額は100万円以下ですので、源泉徴収税額は税抜金額40,000円の10.21%、即ち4,084円となるわけです。

 

ところで、実はこの報酬の源泉徴収義務は、士業への支払だけでありません。

細かい話をやりだすと長くなるので今回は割愛させていただきますが、例えばデザイナーへの報酬、原稿料や講演料、プロスポーツ選手や芸能人に支払う報酬などなども含まれます(源泉徴収税率が上記と異なるものも存在しますので、法規定などを随時ご確認ください)。

 

www.nta.go.jp

 

「専門性の高いフリーランスに業務を発注した際の支払には源泉徴収義務が課せられることが多い」と覚えていただいても、ざっくりとした認識としては間違いではありませんが、実際に何らかの報酬支払が発生した際に、それが源泉徴収対象になっているか否かの判断・詳細については、都度、お近くの税務署か税理士にお問合せいただくのが確実かと思います。

 

源泉徴収した所得税の納付ですが、先に挙げた条文にある「士業」に対するものについては給与の納付と同じタイミング、同じ納付書で納付をします(納期の特例についても適用対象となります)。

それ以外の原稿料・講師料その他の報酬については、報酬源泉専用の納付書がありますので、そちらを使って納付をすることになります(給与のような納期の特例規定は存在しません)。

 

以上が今回ご説明したかった「士業への報酬支払と源泉所得税」の概要なのですけれど、例外というか、ここまでに書いたものとは異なる扱いになるものがありますので、以下、2点その説明を追記いたします。

 


<1>    司法書士、土地家屋調査士、海事代理士の場合

上記3者へ支払う報酬については、その支払額から10,000円を控除したうえで、その差引後の金額に源泉徴収税額を乗じることとされています。

 

これは、例えば司法書士は不動産登記の手数料等で少額の報酬支払が頻出する為、司法書士の手取額の確保と支払い側の事務負担などを考慮して、1万円以下の報酬支払であれば源泉徴収は不要であるという運用になっているようです。

 

いやいや、最近不動産の名義変更登記を司法書士に依頼したら、もっと費用がかかったよ、とおっしゃる人もいらっしゃるかもしれませんが、その請求の明細をご覧いただくと、内訳にある登録免許税や立替交通・通信費、謄本取得の印紙代などを差し引いた純然たる司法書士報酬部分は、そんなに金額が大きくは無いということをご理解いただけるかと思います。

もちろん、例外はあるのですが……。


<2>    行政書士への報酬

官公庁への提出書類作成、補助金・給付金の申請手続き代行料などを行政書士に支払われることもあるかと思います。

ここまでの話の流れだと、これについても源泉税の徴収義務が存在するように感じられるでしょうが、実は、行政書士への報酬支払については、所得税の源泉徴収は不要となっています。

 

ここについては国税庁が質疑応答事例の1つとして公開をしています。

 

www.nta.go.jp

 

こちらを参照していただくと、そこには「一般的に行政書士の業務に関する報酬については、所得税法第204条第1項に規定する報酬には該当しません」ということが明記されています(建築代理士と同じ業務を行う場合は除く)。

 

クライアントに個人が多いこと、単発だったり少額だったりの依頼が多いことから法の適用対象外になっているということも言われていますが、今回のエントリーを書くに当たって私が調べた範囲では、明確に「こういう理由です」という規定なり国会答弁なりは見つけられませんでした。

 

令和8年度税制改正

もともと仕事が集中する時期であることに加えて諸事情があった絡みで、確定申告から3月決算と、怒涛の勢いで仕事に追いまくられていました。

それもあって、なかなかこのブログに掲載する文章を書いているだけの余裕が無かったのですが……

 

さすがに6月になってようやく多少の落ち着きを得ることができました。

 

そこで今回は、遅まきながら令和8年度税制改正項目の中で、当事務所の主たる関与先である中小企業者等に適用されるもので、特に注目しておくべきことについて、2点、簡単に紹介したいと思います。


<1>「少額減価償却資産」損金算入特例の見直し

税務会計上、その取得価額が10万円以上である固定資産を購入した場合には、一旦固定資産として計上し、その後、耐用年数に応じた償却率で減価償却をすることとされています。

 

一方で、従来、中小企業者等に関しては30万円未満の取得価額である場合に限り、固定資産とせずに一括でその期の損金とすることができるという特例が設けられていました。

 

とはいえ、これは無制限に適用できるわけではありません。

まず、その事業者の従業員数が500名以下でなければならず、また適用できるのも年間で総額300万円以内という縛りもあります。

そそこに注意は必要ですが、つまりこれは中小の事業者が少額の試算を購入した場合に、その事業年度の利益を引き下げて税額負担を減らすことで、投資行動を後押ししようという狙いのある政策になります。

 

令和8年の改正では、これが、取得価額40万円未満の減価償却資産までOKと上限が引き上げられました。

 

その背景にはおそらく物価が高騰傾向なことがあるのでしょうけれども、ならば総額の枠も引き上げてくれればいいところが、こちらは年間300万円以内で変わっておりません。
また、適用の対象となる事業者が、従業員数500人以下から400人以下に変更となっており、ここはむしろ要件としては厳しくなっています。

 

総じて、この改正は中小企業者等にとってプラスに働くものなのかといえば、ちょっと微妙な部分も多いな、というところです。


<2> インボイス制度の「経過措置」に係る見直し

インボイス制度の導入に当たっては、従来の免税事業者が不利なことにならないように、2つの特例が設けられていました。
いわゆる「2割特例」と、インボイス番号を取得していない事業者からの課税仕入れに係る仕入税額控除の特例です。

 

(1) 「2割特例」

前者は、本来ならば免税事業者であるはずの事業者が、取引の都合などによってT番号を取得して課税事業者となっている時に、令和8年9月末日を含む課税期間までに限り、その事業年度に係る消費税の納付税額を、売り上げに係る消費税額の2割とすることができる、という規定です。

 

今回の改正では、この「2割特例」が適用可能である期限が過ぎても、個人事業主のみを対象として、令和9年分、令和10年分の2年間については売り上げに係る消費税の3割相当額を消費税の納税額として良いという、「3割特例」の規定が設けられました。


インボイス番号取得へのインセンティブとなり得る特例でしたから、もっと全面的に期限延長をしてくるかと思っていたのですけれども、これはちょっと意外です。

 

(2) 仕入税額控除の特例

インボイス制度では、T番号を有さない事業者からの課税仕入れに関しては原則的に仕入税額控除の対象とすることができません。

つまり、その事業者に支払った消費税の分だけ、納付すべき消費税の金額が増えてしまうことになります。

 

ただ、これまでは普通に仕入税額控除に含めることが出来ていたものが急に一切含められないとなってしまうのは、さすがに納税者への負担が大きすぎるという指摘が出てきました。

そこでその観点から、インボイス導入から3年間(~令和8年9月30日)までは支払う消費税の80%を、そこから更に3年間(令和8年10月~令和11年9月)までは50%を、それぞれ仕入税額控除の対象とできるという特例が設けられました。

 

今回の改正ではこれが延長され、現在の80%控除が令和8年9月30日で終わるのは変わらないものの、そこから2年間(令和8年10月~令和10年9月)までは70%、次の2年間(令和10年10月~令和12年9月)は50%、最後の1年(令和12年10月~令和13年9月)は30%の控除が可能、という規定に変更となりました。


個人的には、納税額ということを見れば、確かにプラス材料な改正ではあるのでそこは評価しhているのですけれども、事務処理をいたずらにややこしくしている側面もあるのは否めないかなと思っています。

 

 


以上が、今回説明をしておこうと思った、普段の会計処理などにも多く関わってくる、特に大きな改正点になります。

 

もちえおん、今回の改正はこれだけではありません。

他にも幾つも変更となったことがあります。

 

当事務所の関与先様に対しては各担当がご説明しているかと思いますが、特に顧問契約等を結んでいるわけでも無く、このブログをご覧いただいている読者様につきましては、「この改正についても書いてほしい」というような項目がありましたら、コメント欄等でリクエストをしてください。


前向きに検討させていただきます。

 

免税店制度の改正(リファンド方式)

空港の保税区域等ではなくても、今では街の中に普通に存在する、輸出物品販売場(以下、「免税店」)。


東京オリンピックを控えて国がその許可取得を推進していたこともあって、特に大都市では小規模事業者が営む小売店でも免税店の看板を掲げている店舗が多く見受けられます。

この免税店で海外からのツーリスト等(以下、「外国人旅行者等」)が物品を買う場合、それが日本国内で消費されず輸出の為に購入されていて、通常生活の用に供するものであれば、消費税を課されずに購入することができる、というのが、現在わが国で行われている免税販売のシステムです。


この時、販売する免税店の側はパスポートの提示を受けて購入者が外国人旅行者等であることを確認し、生活の用に供する為に購入するものであることを証する為の宣言に本人のサインをもらうことで、免税販売を行うことの正当性を担保することになります。

 

しかしこれは、良くも悪くも性善説に根差した運用であり、近年は制度の悪用も目立ってきていたのが実情です。

 

例えば、免税販売の対象となるものだとして税抜価格で購入した物品を、そのままメルカリ等のサイトにて税込価格で転売して消費税相当額分の利益を着服する等の違法行為です。

 

この状況を受けて、国税庁は令和7年度の税制改正で、輸出物品販売場制度の改正を行いました。

従来の制度から、リファンド方式への移行です。

 

この移行の実施日は令和8年11月からとなっているので、もうしばらく時間はあります。
しかし、この改正ではかなり抜本的なところから制度が変わりますので、現時点で既に免税店の許可を得ている事業者、あるいは、これから免税店の許可を得ようかと検討している事業者は、制度改正の内容を十分に理解したうえで、これから先の方針を決めていかなければなりません。

 

そこで今回は、このリファンド方式についての概要、現行制度と何が変わるのかについて、国税庁が令和7年4月に出したパンフレットに準拠しながら、簡単に説明をしたいと思います。

 

(1)リファンド方式の概要

まず、リファンド制度化においては、免税店が外国人旅行者等に対して販売する際の販売価格が、税抜から税込に変わります

つまり、私たちが日常の中で支払っているのと同額の購入額を販売の対価として受け取ることになります。


税抜価格で販売する従来方式とは、この時点で大きな違いがあります。

 

販売した免税店はこの時点で購入記録情報を入力、このデータは政府(国税庁)の免税販売管理システムに登録・保存されます。


この時、免税店が直接、免税販売管理システムに登録するのではなく、承認送受信事業者を利用して登録する場合もあります。

購入した外国人旅行者等は、購入日から90日以内(購入した日の翌日から90日目までの期間)に出国する際に、税関の確認を受けることになります。


この時、同じ領収単位で購入している(つまり、一度に購入・支払をしている)品物のうち、どれか一つでも、消費した、紛失した、あるいは転売した等により所有をしていなかった場合には、同時に購入している全ての物品について、免税措置の適用を受ける事ができない、とされています。

 

免税店が、外国人旅行者等に物品を販売した際の「購入記録情報」と税関が国外持ち出しを確認した際の「税関確認情の双方を保管することで、免税販売が確定することになります。

免税店を経営している事業者は、税関確認情報を取得後、物品を購入した外国人旅行者等に対し、消費税相当額を返金(リファンド)します。
送金された消費税相当額を外国人旅行者等が受け取ることで、免税販売が完結します。

 

(2)消費税相当額の送金方法

購入時にそもそも消費税を上乗せされない従来方式から、一旦消費税も含めて支払を行ったうえで、出国時の税関での手続きを経て支払っていた消費税相当額が返金される方式への変更というのが、この改正のキモになるのですが、では、その返金はどのように行われるのでしょうか。

 

販売を行った免税店事業者が1つ1つ返金をするというのは、それに要する労力の観点等から、少々現実性が薄いと考えられます。

実務的には、返金事業者に返金業務を委託する形になるでしょう。

 

免税店事業者が返金業務だけを返金事業者に委託する、購入記録情報の登録を委託した承認送受信事業者が返金事業者を兼任する、承認送受信事業者と送金事業者をそれぞれ別個に契約し業務委託する、の3つのケースが想定されているようです。

 

(3)その他の改正点

リファンド方式の移行に伴い一番大きく変わるのは上記の、一旦は税込みで販売したうえで税関での承認を経て返金が実施される、という流れですが、それ以外にも改正される事項は複数存在しています。

 

免税対象物品の用途が問われなくなったり、金額の上限がなくなったりといった範囲の見直し、購入時に免税購入対象者であるか否かの確認をする際に提示を受ける書類の変更など様々なのですが、これを1つ1つ説明しているとあまりに長くなりすぎるので、今回は割愛させていただきます。


どこかのタイミングで改めてこのブログでも解説をするかもしれませんが、さしあたり、今すぐにそこも詳しく知りたいという方は、国税庁の「リファンド方式特設サイト」等をご覧ください。

www.nta.go.jp

 

ひとまずリーフレットで確認を、という場合は、以下のリンクになります。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/pdf/0025003-110_01.pdf

 

(4)税務会計処理

リファンド方式の場合の税務会計処理について説明します。

 

従来であれば販売の時点で輸出免税処理をしていたところ、今後は、販売の時点では普通の課税売上として処理をすることになります。

そのうえで、外国人旅行者等によって税関確認情報の取得が成されれば、これを輸出免税取引に振り替える。

 

具体的には、課税売上をマイナスして、輸出免税をプラスするわけです。

 

なお、この処理は税関確認情報の取得の都度やっても、〇〇月分のように一定期間の該当取引をまとめて処理するのでも構いません。

同一期中に課税売上と振替が発生するのであれば簡便的に課税売上にマイナス仕訳を計上すればシンプルですが、決算日をまたぐケースも、当然に想定されます。

 

ですので、リファンド方式の適用を受ける事になった売上については、課税売上に関わる対価の返還等として会計入力をすることになるでしょう。

 

本来的には納付する必要の無い消費税を一度納付し、翌年に還付を受ける形になりますから、一時的に資金繰りを圧迫するかもしれませんが、そこはやむを得ないと受け入れるしかなさそうです。