三鷹の税理士 平林 達夫 の日記

三鷹にある平林会計事務所の税理士、平林達夫です。税金に関する疑問、不安、不明事項、法人税務や確定申告、相続、新規起業に関する相談など、いつでもお気軽にご連絡ください。当事務所では、初回相談料は無料とさせていただいております。詳しくは、リンクの欄にあるホームページ等をご覧ください。

インボイス番号の店頭掲示

インボイス制度の適用開始も目前ですが、
これまでにこのブログではこの制度について、
そして会計ソフトへの実際の入力について
特例や注意事項を紹介、説明をしてきました。

 

もちろん、これだけ大きな改正項目ですから
10月以降も必要に応じて解説その他を
色々と書かせていただく予定でおります。

 

そんな中で、今回はこれまで触れ忘れていたこと、
つまり、小売りや飲食店など一般消費者を
主に取引先としているような小規模事業者が
インボイス番号を取得していることを
どのようにアピールしていくかを紹介します。

 

これ等の店舗で問題、というか不安材料となるのは、
経理課から消耗品購入や打合せ時の飲食などは
できるだけインボイス番号のある店舗で、
というような指示が出ているような会社員に、
大手チェーン以外は番号が無いかもしれないから
利用しないと考えられてしまうことでしょう。

 

そこで、この店はインボイス番号を取得した
課税事業者だとアピールする必要が生じます。

 

その為には店の入り口等にその旨を記した
表示を貼りだせばいいのではないかということで、
TKCが例として提示したのが下の画像です。

 

 

このようなシール入り口やレジのところに
貼っておくことで、インボイス番号を持つ店だと
アピールするという方法は、他の事例では
例えば免税店(輸出物品販売場)について
観光庁が作ったシンボルマーク等があります。

 

www.mlit.go.jp

 

免税店シンボルマークと違いインボイス番号掲示
特に決まった様式があるわけではありませんから、
TKCからこのシールを購入して使ってもいいし、
自分で独自のデザインを作ってみるのもアリです。

 

重要なのは、「インボイス番号取得済みである」
ということを一般に広くアピールすることなので、
そこが強調されるデザインにするのがいいでしょう。

 

業界として統一デザインを作る動きがあっても
いいのではないかと思うのですけれども、
私のリサーチ不足なのかどうか、今のところ、
それに該当するようなものは見つけられていません。

 

インボイス番号の有無が売上にどれだけ影響するか
の確認も含め、これからの課題かもしれませんね。

 

インボイス制度下の会計ソフト入力 その2

消費税のインボイス制度が始まるまで、あと半月ほどです。

 

前回、8月27日に公開したエントリーでは、当事務所が推奨している2つの会計ソフト、TKCの財務ソフト(FXシリーズ、DAICシリーズなど)と、ソリマチ㈱のソフト(会計王)について、主に前者に重きを置いて、会計データ(仕訳)を入力する際の基本的事項を説明させていただきました。

今回は、その補足というか、おそらく実際に入力を開始した皆様が気にされるであろうことのうち、特に、これは戸惑うかもしれないと思われることを書かせていただきます(今回は、㈱TKCの財務ソフト、FX2 のみを例に使ってご説明いたします)。

 

いざ10月になってから、これはこれで大丈夫なのか、と不安に駆られたりしないよう、今回のこのエントリーをお読みいただいて、「インボイス制度下での入力はそういうことになるんだな」と、事前にご理解いただければと思います。

 

<1> 請求書と入力値との消費税額のズレ

前回にお知らせしたように、インボイス制度が始まると、登録番号(インボイス番号)を持たない者からの仕入は、例えその請求書に消費税額が記載されていようとも、消費税の課税対象外の取引として取り扱います。

例えば、10,000円の物品に対し1,000円の消費税を加算して11,000円という請求書を受け取り、支払った(あるいは支払いに対し領収証を受け取った)というような取引があったとして、その相手方がインボイスの登録番号を有さなかった時は、これを「税込:11,000円」ではなく、「税抜:11,000円」として認識しなければならないのです。

 

つまり、その事業者が納付しなければならない消費税の計算上、その仕入については、税額の控除対象(「仕入税額控除」の対象)として使うことができません。

 

とはいえ、いきなりインボイス番号を有さない相手からの仕入の全てを消費税の「仕入税額控除」の対象として認めないというのでは、諸々の問題が生じることが懸念されるので、経過措置として、3年間は従来は「仕入税額控除」の対象とされていた額の80%を、その後さらに3年間は50%を、「仕入税額控除」の対象として認めることとされています。

この経過措置の入力時の仕訳が、今回の採り上げる論点です。

 

仮に、令和5年10月27日に、当事務所(平林会計事務所)から請求を受けた 11,000円 の顧問料を現金で支払ったとします。

当事務所は登録番号を取得していますので、この場合、FX2の入力画面(1伝票型)は、次のようになります。

 

 

消費税の課税仕入(課税区分「5」)として入力し、以下の仕訳のように、1,000円の仮払消費税等を計上するという、皆さんが見慣れた形ですね。

 

   雑費       10,000  /   現金  11,000

   仮払消費税等  1,000

 

では、当事務所が登録番号を取得しておらず、経過措置の対象となる場合はどうなるのでしょうか。

この場合の課税区分は、前回紹介した、「52:免税事業者等からの課税仕入れ(課税売上げ)」になります。

 

 

同じように仕訳を掲載します。

 

   雑費       10,200  /   現金  11,000

   仮払消費税等     800

 

税込 11,000円(消費税率 10%)の取引なのに、計上される仮払消費税の金額は 800円となっています。

何だか気持ち悪いな、と感じられるかもしれません。

この場合の 800円は、請求書に記載されていた 1,000円 の消費税(本体価格の10%相当額)の80%、つまり、1,000 ✖ 0.8 =800 という式で算出されています。

本来は仮払消費税等は一切計上されないところを、経過措置として認められる割合だけ、計上しているという形ですね。

 

請求書記載の「税額」とは異なりますし、本体価格も、請求書とはズレてしまっており、10%という税率に合っていないと見えるでしょうが、これが、インボイス制度下における正しい仕訳計上であり、会計入力となるのです。

感覚的には座りが悪くて納得し難いでしょうが、「そういうものだ」と呑み込んでいただくしかありません。

 

<2> 売掛金等の入金額から差し引かれたものの処理

4月30日に公開したエントリー、インボイス制度で注意すべきこと その1」へのリンクを貼っておきますので、よろしければここの「<3> 少額な返還インボイスの交付義務免除」をご覧いただきたいのですが……

売掛金等を取引先が振込んでくる時に、振込手数料を差し引いて(こちらの負担として)入金されることがありますよね。

 

 

これを、こちらが支払った経費であるとして課税仕入で処理をする場合には、その取引先から振込料部分の仕入インボイスの発行を受ける必要があります(こちらが小規模事業者の特例対象に該当するのであれば、インボイスの発行を受けずとも通常の課税仕入として処理ができますが……)。

しかし、当方が負担することになった振込料等の全てに仕入インボイスを取り付けるのはかなり面倒ですよね。

そこで、上記、「少額な返還インボイスの交付義務免除」特例を活用する、すなわち、負担することになった振込料部分は、売上等の値引額であるとして、課税区分を「11:課税売上げに対する対価の返還」にして処理すれば、改めて仕入インボイスあるいは売上インボイスを発行する必要は無くなります。

 

使用する勘定科目は、「売上値引」等を使わなくても、課税仕入として処理していた時と同じように、「通信費」や「支払手数料」を用いて構いません。

入力画面は、このような感じになります(当事務所に対して、例えば書架等の備品の売上が発生したところ、代金が振込料相当額である 110円 が差引かれた金額で入金されたと仮定します)。

 

 

仕訳は、こんな感じですね。

 

   通信費       100  /   売掛金  110

   仮受消費税等      10

 

ここで1つ、注意していただかなければならないことがあります。

それは、当事務所に対して売ったのが、軽減税率の適用対象であるもの、例えば事務所打合せ用のペットボトル飲料1ケース等だった場合です。

 

これは理屈で考えていただきたいのですが、軽減税率で売上げたものに対し値引きを行うとしたら、その値引きに関わる消費税率はどうなるでしょうか。

当然、軽減税率が適用されますよね。

つまり、当事務所が支払時に差し引いたのは銀行等に支払った振込料(110円)相当額で、これは通常の税率 10% が適用されていますが、その差引額を売上値引とする場合には、これを軽減税率 8% で処理することになるのです。

 

入力画面で確認してみましょう。

 

 

仕訳は、こうなります。

 

   通信費       102  /   売掛金  110

   仮受消費税等        8

 

明らかに消費税率 10% の取引っぽい 110円という取引額なのに、適用される消費税率は軽減税率の 8% なので違和感を覚えると思いますが、これも、そういうものなのだと割り切ってください。

なお、<1> の事例と違ってこの 「8円」という消費税額は、10円 の 80% 相当額として計算されたものではなく、普通に、税込 110円 を税率 8% で本体価格と借受消費税等とに分解して算出されています。

つまり、次の計算式です。

   110 ✖ 8/108 ≒ 8 円

この点、誤解されないよう、お願いいたします。

 

以上、今回は、インボイス制度が始まる10月以降の実際の会計入力時に、戸惑ってしまう可能性が高い2つの事項についてご説明しました。

 

 

インボイス制度下の会計ソフト入力

今から1ヶ月もすれば、いよいよ消費税等のインボイス制度が開始されます。

これまでこのブログでは、インボイスに関わる取扱いの特例や、具体的項目などを書かせていただいてきましたが、今回はそれについては一旦停止して、会計ソフトに仕訳入力を行う際のことをご説明いたします。

 

といっても、全ての会計ソフトについて書いていくのは無理なので、ここでは、当事務所が推奨しているもの、株式会社TKCの財務ソフト(FXシリーズ、DAICシリーズなど)と、ソリマチ株式会社のソフト(会計王)を、主に前者に重きを置いて、説明していきます。

他社のソフトについても基本的な部分は変わらないのではという想像はできますが、実際にそれ等を操作するなどして確認したわけではないので、10月以降に入力を行う皆様におかれましては、そのソフトの販売元やご契約されている会計事務所に、実際の操作についてはご確認いただきたいと思います。

 

<1> 課税区分の追加

どのような会計ソフトであっても、仕訳入力をする際には、その取引が消費税の課税対象になるのか否かという原則的判断をはじめ、その取引が消費税的にどのような課税区分に属するのかを判断して入力する欄があるかと思います。

そうしなければ、その事業年度の消費税額の正確な計算を行うことができません。

その選択肢の中、または別欄に、この10月以降は新たな区分が増えることになります(実際には現段階で既に入力・選択が可能となっていることでしょう)。

それが、登録番号(インボイス番号)を持たない者からの仕入に対応する区分です。

 

1)㈱TKCの財務ソフトの場合

下の画像は㈱TKCの財務ソフト「FX2」の、仕訳入力時の消費税課税区分選択画面なのですが、このソフトをこれまで使ってきた方は、今年6月のバージョンアップで「52」と「53」という2つの選択肢が増えたことに気付かれたかもしれません。

ここに、登録番号を持たない、インボイス(適格請求書等)の発行を受けていない仕入関係の仕訳が入ることになります。

「52」は消費税の課税対象となる仕入のうちインボイスの交付を伴わないものを行った時、「53」はそれに対して返品・値引きなどがあって対価の返還を受けた時に、それぞれ選択することになります。

 

なお、「52:免税事業者等からの課税仕入れ(課税売上げ)」という項目名ですが、「免税事業者」からの「課税仕入れ」という一見矛盾しているフレーズが目を惹きますので、ここが気になって仕方がないという方もいらっしゃるかもしれません。

これは、相手が免税事業者であっても、消費税の課税対象となる4つの要件(①国内で ②事業者が事業として ③対価を得て行う ④資産の譲渡及び役務の提供)を満たす課税取引を行うことは当然にありますので(取引そのものは消費税の課税対象ですが、その事業者が特例の適用を受けて免税事業者になっているのでその取引からは消費税が発生しない、というのが、消費税法上の位置づけになります)、それを受けてこういう記述になっているのでしょう。

また、「等」が付いているのは、必ずしも相手は免税事業者であるとは限らないということを示しているのですが、これは、消費税の課税事業者であってもインボイスの登録番号を取得していないという事業者も理論上はあり得ること等を反映しているのだと思われます。

 

 

登録番号の無い者からの仕入は消費税の仕入税額控除の対象としない、というのがインボイス制度の内容ですから、ならばそういった仕入は課税対象外の「0:不課税取引(税外取引)」を選べばいいのではないか?という声もあるでしょう。

確かに、制度の概要からいえば、それで問題は無さそうです。

しかし実際には適格請求書等以外の仕入仕入税額控除からの除外には、令和8年10月までは免税事業者等からの仕入であっても80%相当額の、令和11年10月までは50%相当額の仕入税額控除を認めるという、経過措置があります

(この経過措置に関する日本税理士連合HPの表はこちらから)

 

したがって、この経過措置分の仕入を集計する為にも、消費税の課税対象となる4要件を満たさないことから初めから課税対象外となっている取引と、4要件は満たしているものの取引相手が登録番号を持っていないので課税仕入であるとは扱えない取引とでは、明確に処理を分けておく必要が生じるのです。

 

2)ソリマチ㈱の会計王(22以降)の場合

ソリマチ㈱のソフトで、インボイスに対応しているバージョンの「会計王22」だと、ここの選択画面は次のようになります。

 

画像はクリックで拡大されますが、それでも見にくいかもしれないので、選択のプルダウンメニューのところを抜粋してみましょう。

 

80%控除になるのか50%控除になるのか、仕訳の起票日などから自動判定はしてくれなくて、自分で判断して選択しなければならないという点が、㈱TKCのソフトに劣りますが、ともあれ、ここに経過処置の対象or対象外を入力することで、その課税期間の消費税が適切に計算されることになります。

 

<2> 特例の場合の入力

以前、以下の2回のエントリーで説明したように、インボイス制度化においては、適格請求書等の受取が無くとも課税仕入として仕入税額控除の対象とすることが、特例的に認められている取引があります。

 

 

ここで、仕入に関わるインボイスの交付を不要とする特例について、改めて簡単に列記してみましょう。

  1.  3万円未満の公共交通機関(鉄道、バス、船舶)の運賃
  2.  3万円未満の自動販売機での購入
  3.  郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)
  4.  従業員等に支給する、通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当
  5.  簡易インボイスの記載事項(取引年月日を除く)を満たす入場券等が、その使用の際に回収される取引
  6.  古物営業、質屋、宅地建物取引を営む事業者が適格請求書発行事業者ではない者から、古物、質物または建物を、当該事業者の棚卸資産として取得する取引
  7.  適格請求書発行事業者でない者から、再生資源または再生部品を棚卸資産として購入する取引

更に、これに加えて、もう1つ。

 

  •  基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5千万画に家の事業者が行う、税込1万円未満の課税仕入れ(令和11年9月30日までに発生する取引に限る)

 

上記に該当する取引については、インボイスの受取がない、登録番号を持たない者からの仕入であっても、インボイスを受け取ったものとして扱っていいことになっています。

つまり、通常の「課税仕入れ」とみなして構わないとされているのです。

 

では、この場合、<1>で紹介した、財務会計ソフトにおける課税区分の選択は、どのようなものになるでしょうか。

 

結論から書きます。

このような場合は、TKCのソフトであれば課税区分「5」を、ソリマチ㈱のソフトであれば経過措置選択を「適用なし」で入力してください

 

これは、取引先(仕入先、購入先)が、インボイスの登録番号を持っているか否かを問いません

というのも、仕入税額控除の対象外となる(ただし、6年間は経過措置として一定割合の仕入税額控除参入は可能)のは、登録番号その他が記載されたインボイス(適格請求書等)を発行していない相手との取引であって、その判断の為には発行を受けた請求書、領収証、納品書などが(法の規定を満たす)インボイスに該当するか否かを確認する必要があるからです。

最初からインボイスの交付を受けなくてもいいというのは、すなわち、この確認作業もしなくていいということを意味します。

ですから、そういった取引については、会計ソフト等への入力時の課税区分は、消費税法の原則に立ち戻って、消費税課税の4要件を満たすかどうかのみで、課税取引か否かを判定することになります。

そこに、登録番号の有無は関わってきません。

 

 

以上が、インボイス制度下で財務・会計ソフトへ入力を行う際に、課税区分欄で注意すべきことになります。

今回は㈱TKCとソリマチ㈱の製品についてのみ書いていますが、基本的に、他社のソフトについてもこれと同様の対応をすることになるはずです。

 

インボイス制度が開始以降、実際に仕訳を入力する際に、おそらく、当面一番間違いが発生するのはここになるのではないか、と考えられます。

結構手間な話ではありますが、経理担当、入力担当の皆様は、今回ご説明した点に十分ご注意いただいて、日々の入力をしていただければと思っております。

 

 

インボイス制度で注意すべきこと      ~簡易インボイスについて

今年10月の消費税インボイス制度導入まで残り日数が数ヶ月となったこの段階で、制度の開始時に注意すべき事柄などを説明する記事、今回は、当事務所の関与先様にも関連することの多い事項についての、各論の第2回になります。

 

様々な人とインボイス制度について話をしていて、意外と理解が為されていないのだなと気が付いた項目の1つとして、例えインボイス番号を取得している事業者からの仕入に関わる請求書だとしても、それが法の規定する「適格請求書等」の要件を満たしていないものであった場合には、「仕入税額控除」の対象にはならない、ということがあります。

 

では、インボイス制度が請求書等の記載事項として求めているのは、どういった項目なのでしょうか。

今回は、ちょっと基礎に戻って、そこから確認したいと思います。

 

<1> 適格請求書の記載事項と適格簡易請求書等

これは、国税庁の発表しているQ&A等にもわかりやすく箇条書きされています。

www.nta.go.jp

ここでは、それをそのまま引用してみましょう。

  1.  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2.  課税資産の譲渡等を行った年月日
  3.  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  4. 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

ポイントとなる点はいくつかありますが、今回は適格請求書等の書式について述べることが目的ではないので、そこは割愛させていただきます。

過去にこのブログでその点について書いた回もありますし、上記リンク先のQ&Aにも具体例を示した回答が掲載されています。

また、顧問契約を結んでいる税理士がいらっしゃる事業者様は、その先生に確認していただければと思います。

 

原則的には、この6つの項目の記載が無ければ、その仕入等は消費税の計算上、「仕入税額控除」の対象としては使えません。

インボイス制度の趣旨とされていることを考えれば、それはそうなるのだろうな、と呑み込める理屈では、あります。

 

しかし、一方で、例えば小売店舗での物品購入等の際に、逐一、上記の事項が完備された完璧なインボイスを求めていると会計に時間がかかり過ぎるのではないかという疑問も生じますよね。

そこに対する制度の対応が、適格簡易請求書等、いわゆる「簡易インボイス」の制度です。

 

これは、上記の記載項目の一部を、省略または簡便化したものになるのですが、一番大きいのは、6番目の要件である「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」、つまり領収書等の宛名を記載しなくていいことでしょう。

これで、レジ等で自動出力したレシート類(その他の事項は記載されている必要があります)をそのまま、インボイス制度に適合した請求書等として扱うことができるようになります。

 

対象となる事業者は、次の通りです。

 

① 小売業

② 飲食店業

③ 写真業

④ 旅行業

⑤ タクシー業

⑥ 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限る)

⑦ その他これらに準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行うもの

 

「不特定かつ多数の者が相手の場合に限る」という要件が付されているのは、⑥と⑦になり、①~⑤ にはそのような限定はされていないことに注意してください。

たとえば、コンビニや駅の売店などは、①に該当しますね。

 

<2> パーキング・メーターと簡易インボイス

駐車場業の内「不特定かつ多数の者に対するもの」というのは、例えば、きちんとした賃貸借契約を結んでいる月極駐車場等は、その契約の当事者が双方ともに特定されているので、これに該当しないことになります。

つまり、対象となるのは時間貸し駐車場(コインパーキング)や、商業施設や空港等に併設されている有料駐車場だと思っていただいていいと思います。

 

なお、タイムズ駐車場(タイムズ21㈱) や 三井のリパーク三井不動産リアルティ㈱)等のコインパーキングは、実際に駐車場用の土地が存在し、それを時間貸ししている形になりますので、明確に「駐車場業」と言えるのですが、道端に存在しているパーキング・メーターは、実は厳密に言えば土地の時間貸しには該当しません。

これは、私もインボイス制度の適用関係を調べていて初めて知って驚いたのですが、パーキング・メーターに投入する料金は、正式には「駐車場代」では無いのです。

そのことは、例えば警視庁のこのQ&Aにも明記されています。

www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp

パーキング・メーターに投入する料金は駐車場代ではなく、「パーキング・メーター等の維持管理に必要な費用を、利用される方から『手数料』として納めていただくもの」。

そう言われていれば、確かにパーキング・メーターは公道上に設置されていて、私たち利用者は公道の一角に一定時間、車両を置いてはいるものの、それは別に公道を賃借しているわけでは無いわけです。

 

では、土地の賃貸借に該当しないのであれば、「駐車場業」ではないことになって、簡易インボイスの対象にはならず、つまり、インボイスに求められる6つの記載事項を全て網羅した正式な適格請求書等の交付を受けなければ、「仕入税額控除」の対象とすることはできないのでしょうか。

 

一方で、パーキング・メーターの代金は、4月30日の記事に書いた、小規模事業者に対する1万円未満の仕入に関するインボイスの緩和の対象にはなるでしょうから、「基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者、あるいは特定期間の課税売上高が5千万以下の事業者」であれば、どのような領収証の発行を受けたにせよ、そもそもパーキング・メーター代を「仕入税額控除」に含めるのに、何にも問題はありません。

 

では、この規定の適用を受けられない、一定規模以上の事業やの場合はどうなるのか。

 

なお、インボイス制度では、自動販売機等からの商品等の購入で3万円未満のものについても、インボイスの受取がなくても「仕入税額控除」の対象にすることが、制度上、認められていますが、パーキング・メーターは、代金の受領は精算機で行われますが、サービスの提供や物品の譲渡がその機械で行われるのではないので、この「自販機特例」の対象にはならないとされています。

つまり、こちらの特例も使うことはできません。

 

結論から言えば、ここについては、取引の実態はともあれ、インボイス制度上は「駐車場業」として取り扱っていいことになっています。

おそらく、上記の簡易インボイス対象となる事業者の例示のうち、「⑥ その他これらに準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行うもの」に該当するという判断になるのだと思われます。

 

以上、パーキング・メーターの話は少しマニアックな論点でしたが、今回は、簡易インボイス制度について、概要をご説明しました。

 

 

インボイス制度で注意すべきこと      ~ETCのカード決済

あと数か月後の令和5年10月1日には、消費税に係るインボイス制度が否応なしに開始されます。

今回は、制度的な特例について特例的な取扱いを主に説明してきた第1回第2回に続いて、特に今までは気にしてこなかったけれども、10月以降は注意する必要がある項目のうち、多くの事業者に関係してくるであろうETC利用料について、説明をさせていただきます。

 

<1> ETC利用料のクレジット引落(基本的理解)

様々な点から利便性が高いこと、そして料金が割引になること等から、今や高速道路を走る車両はそのほとんどがETCの機器を設置しています。

 

高速料金の支払時に、都度現金払い又はカード払いをしているのであれば、有人料金所で領収証を受け取れるので、インボイス制度下で仕入税額控除に使える適格請求書等を受け取れるので、そういう意味では特に問題はありません。

しかし、ETC機器を取り付けてクレジットカード決済を選んでいる場合は、そのままゲートを通過して、登録しているカードで後日利用分の高速代が引き落とされることになります。

つまり、領収証を当日に受け取っていないわけですが、この場合はどのようなことになるのでしょうか。

 

高速道路会社は、首都高速道路㈱も東日本高速道路㈱も中日本高速道路㈱も、それ以外の各社も、インボイス番号は当然に取得しています。

ですから、彼らが管理している高速道路を使用した場合の料金は、原則的には仕入税額控除の対象とできるはずです。

ところが、ここがインボイス制度の面倒なところ。

原則的には、たとえ仕入先、経費の支払先がインボイス番号を取得している課税事業者であったとしても、そこから受け取る請求書や領収証が制度に適合している適格請求書等ではなかったのであれば、仕入税額控除の対象とすることはできないのです。

 

ここまでの2回で紹介してきたように、適格請求書等を受け取るのが手間であるような一部の取引については、適格請求書等の取得が免除されていて、帳簿に必要事項さえ記帳されていれば仕入税額控除の対象とすることができることになっています。

しかし、ETC利用料のカード決済については、それ等の特例の対象にはなっていません

つまり、仕入税額控除の対象としたければ、何とかして適格請求書等に該当する領収証などを手に入れなければならないのです。

 

<2> インボイス制度下での対応

では、具体的にどのような対応が必要となるのか。

 

会社契約のETCコーポレートカードであり、毎月「ETCコーポレートカード請求書(通行料金等請求書)」が送付されているのであれば、話は簡単です。

というのも、時期は各社で違いがあるかもしれませんが、こちらは、各社がインボイス制度に対応した適格請求書様式に書式を変更してくることになっているのです。

つまり、ETCカードを利用している側が何かやらなければならないことがあるわけでは、ありません。

新しくなった請求書を、今まで通り、入力原票として利用し、保存をしていれば、それで大丈夫です。

 

問題は「ETCコーポレートカード請求書(通行料金等請求書)」のように請求書が定期的に送付されてこない、普通のETCカード利用のクレジット決済です。

この場合の高速各社の対応は、それぞれのHPで発表されています。

一例として、東日本高速道路㈱ の該当ページのリンクを、以下に貼ります。

 

www.driveplaza.com

 

要は、これに該当するものについては、ETC利用照会サービスから「利用証明書」の発行を受けなければならない、とうことです。

 

www.etc-meisai.jp

 

登録の手間はあるものの、まあそれはいいとして、この「利用証明書」の発行を受けるという方式には、注意点、面倒なところがあります。

 

<まとめ発行では駄目であること>

「利用証明書」は、料金所での「領収証」の代わりに発行されるものです。

一応、「〇月分」という感じでまとめ発行ができるようにはなっているようですが、ここで改正電子帳簿保存法との絡みが出てきてしまいます。

紙で交付を受けたのではなく、ネット経由等で電子的に取得した領収証等は電子帳簿保存義務の対象となり、1枚ごとに「日付」「相手先」「金額」の3つの項目で検索ができるようにしなければなりません。

つまり、まとめ発行で、例えば50枚の領収証が1ファイルになっているような場合には、この要件を満たさないことになります。

面倒でも、領収証1枚ごとに、データのダウンロードを行わなければなりません

また、都内の事業者等で、首都高速道路㈱、東日本道路㈱、中日本道路㈱ の管理区間をまたいで高速道路を頻繁に利用しているような場合は、料金所を通過するごとに「利用証明書」が発行されると思われます。

これ等のことから、ダウンロードしなければならない「利用証明書」の枚数は非常に多量になり、「ETC利用照会サービス」での発行手続きにかなりの手間を擁することが想定されます。

 

<取得した「利用証明書」の保管>

上記項目にも書きましたが、「ETC利用照会サービス」からの「利用証明書」取得は、電子発行によるものであり、紙の証明書を受け取るわけではありません。

つまり、取得した「利用証明書」は、改正電子帳簿保存法の適用対象となり、保存要件を満たす形でファイル名などを付け、社内のサーバーや社外のデータストレージサービス等に、適切に保存する必要があります

 

取得した「利用証明書」を印刷して、紙ベースで保存していれば大丈夫という話にはなりませんので、ご注意ください。

 

hirabayashikaikei.hatenadiary.jp

 

以上、今回はETC利用料とインボイス制度について書かせていただきました。