三鷹の税理士 平林 達夫 の日記

三鷹にある平林会計事務所の税理士、平林達夫です。税金に関する疑問、不安、不明事項、法人税務や確定申告、相続、新規起業に関する相談など、いつでもお気軽にご連絡ください。当事務所では、初回相談料は無料とさせていただいております。詳しくは、リンクの欄にあるホームページ等をご覧ください。

私の税法論文執筆法(その6)

私の実経験に基づいて確信しているところの「国税審議会の審査を無事に通過できるような、しっかりとした税法論文」の効率的かつ効果的な作成方法について、ここのところ複数回に渡って書かせていただいていますが、今回はその第6回になります。

 

前回の第5回までで、どういう論文にするのかのテーマを決め、その為の資料・文献を集めて、そして集めたものの読込を始めるまでについてを説明してきました。

論文本体の執筆に向けての流れという意味では、修士論文全体の概略を語る「序論」を書くのが、次にやるべきこととなってきます。

つまり、大枠を説明する文章を作成するわけです。

 

ところで、この段階で絶対にやるべきこと、「序論」を書くのにも、そしてその後の本文を書くのにも、絶対にやっておかなければいけないこととして、まずは、皆さんが書く論文はどういう構成、構造を持つものにするのかを考え、構成案としてまとめるという作業があると私は考えています。

なぜならば、これをやるかやらないかで、その後の作業の進捗速度・精度が大きく変わるからです。

2年間という期間で、国税審議会の審査を確実に通過できるクオリティーの論文を書き上げたいのであれば、ここにしっかりと時間をかけることが、一番の近道です。

 

こうして全10回予定でアップしている「税法修士論文作成法」の中で、今回の第6回と第7回は、まさに、内容のしっかりと充実した税法修士論文を2年間で書き上げる為の、私の考えている最良のメソッドにおける、一番の核心部分となります。

是非、そういう認識で、読んでいただければと思います。

 

<1> 読者層を想定した目次を最初に作り込む

構成上の細分化した部分、節や項についてはこの段階では保留にして、追って考えることとしてしまって構わないので、とりあえず第一段階として、タイトルを付した章を並べて、論文の一番大まかな構成を作ります。

そこから、読み込んだ資料を生かしつつ、後で紹介する設計図・構成案の作成を通じて、更に詳細に論文の構造、背骨・軸となるものを作っていきます。

 

ここで……というか、最終的に論文を完成させるまでの間、常に意識しておかなければいけないのは、「その論文は、誰に向かって書いているものなのか」ということでしょう。つまり、読者として想定しているのは、どんな人なのか、ということです。

 

論文というのは本質的には、自らの主張・見解を他者に訴える、可能ならば同意・支持を得る為に書くものです。読んでいる人に、伝えたいことが伝わらないようでは、それは論文とは言えません。ただの私的文書に過ぎないと言ってしまえるでしょう。

よく言われるのは、税法修士論文日経新聞を読んでいるサラリーマンに説明するくらいの難易度で書くべきだ、ということ。

もちろん論文である以上は税法用語等を使った専門的な研究を繰り広げることになるわけですが、丁寧な説明や脚注などを駆使して、専門外・門外漢の人にとっても分かりやすくかつ読みやすい論旨展開と議論を記述するようにするというわけです。


ちなみに、私はそこからさらに踏み込んで、駅前辺りを歩いている高校生を呼び止めて読ませた時に、「何を言いたいのかがよく分からない」とならず、「難しいところもあるけれども、この論文が主張していること、言わんとしているところは理解できた」と言わせるくらいの難易度で書こうと考えていました。

ただ、だからといって、「論文の難易度(あるいはレベル)を下げて簡単な話をしよう」とは微塵も思ってはいませんでした。

あくまで内容は、全力を尽くした本気のものを書くのが前提です。

そのうえで、その記述については素人でも何となく理解できるレベルの分かりやすさを保つことを重視した。

それが、私が修士論文を書くにあたって終始キープしていたスタンスです。

 

そういった点を踏まえたうえで、では、目次案はどのようにすれば作成できるのでしょうか。

 

実際には、効率的に税法修士論文を書く場合には、その構造は概ね4つの類型に分けることができます。

「特定事件(裁判例)に係る論争参加型論文」「特定の問題につき複数の裁判例を比較する論争参加型論文」「裁判例を使わずに法解釈論等を行う論争参加型論文」そして「(特定の論者の特定の論文を題材に、その見解の正しさを検証する)レビュー論文」です。

名前を見れば、それぞれがどのようなタイプの論文かは、想像していただけるかと思います。

これでなければ論文として成立しないというわけではなく、当然これ以外のタイプの構造でも税法修士論文は書けると思いますが、普段から税法の解説や評釈などを書きなれていない人は、上記4つの類型のいずれかを選択するのが、2年間での論文作成の近道だと言えるでしょう。

この4つの類型がそれぞれどのような構造を持つのかという紹介は一連の「論文作成法」エントリーの最終回に補稿として公開する予定ですので、ここでは、どのようなタイプであっても共通することを書かせていただきます。

 

ちなみに、この段階で項レベルまで詳細に構成・目次を考えること、実際に本論を書き出す前に、目次が項レベルまでできあがっていることは、その先の執筆作業時に余計な手間をかけることなく、無駄なく論文を書き上げる為の、最大のポイントになると私は確信しています。

 

大事なのは、章レベルだけではなく、節レベル、項レベルまで詳細化し、併せて、それぞれの章・節・項で何を語るのか、全体の流れ(議論の発展的展開)と各要素の繋がり(相互関連性)を意識して構築していかなければいけないということです。

ここがしっかりできていないまま本論を書き始めると、どこかの段階で「その章・節・論文全体で、何を言いたいのかが分からなくなってしまう」「論旨展開が繋がらなくなる」「本筋と関係性の薄い話を延々と、熱心に取り組んで(かなりの時間を費やして)書いてしまう」というような事態に陥るハメになる可能性が高く、実際、私は同期や後輩でそういう人を何人も目にしています。

 

論文は、前の章の記述内容を受けて、次の章でそれを発展させていくような流れになっていなければ駄目です。

 

全ての章が有機的に繋がっていること、問題提起から始まった議論・研究が章を重ねるごとに展開していき、最後はそれが集約されて結論が導き出されるという構造になっていなければ、論文ではありません。

ここを間違えると、多くの章を書いていてどれだけ作業が進んでいるように見えても(文字数が何万字にも至っていても)、「論文を作る」という点からすればほとんど進捗していないということになります。

そこまでにどれだけ時間を費やして書いたものであっても、それは論文としての進捗度や内容とは関係ないのです。

 

先に目次や論文の設計図・構成案が全てできあがっていれば、そういう事態は、基本、防ぐことができるというのであれば、これをやることは、この段階でのマストな作業ということになるのではないでしょうか。

以前にも書きましたが、論文の執筆で一番大きなウェイトを占めるのは、論文全体の「構成」を考える作業です。

その入り口が目次案の作成であり、ここがしっかりとできるかどうかが、この先、論文執筆を順調に進められるかどうかの大きな分岐点になります。

 

<2> 目次の組み立て方

以下、簡単に、私が思う目次の作り方を書いてみます。

 

まず、構成を考えるときは、①章の流れを考える(各2行くらい)、②各章につき、節の流れを考える(各2行くらい)、③各節につき、項の流れを考える(各2行くらい)という順に作業を進めます。

その上で、自分の集めた資料が、それぞれどの部分で使えるものなのかを、当てはめていく。

これをやっていけば、裏付けとなる資料が不足している部分にも気が付けるというメリットがあります。

土壇場で慌てないで済むようにする為に、必須の作業だと思います。


そして、この作業の時に強く意識すべきなのが、自分が書きたいこと、書こうとしていることを、「どのようにして書けば(説得力を持って)読み手に伝えることができるか」ということです。

この意識が欠けていると、しっかりと筋の通った目次案は作れないと私は思っています。

 

私の考える章立ての作り方は、大きく2種類あります。

 

① 自分の論文の構造、何をどのように展開していけば結論まで導けるか明確に思い描けている人の場合。

    ↓

自分の脳内にある構想に従い、第2章以降を順番どおりに構成していく。

 

② どの様に章立てを作れば無理のない流れで結論まで持っていけるのか、まだまだ曖昧模糊としていて明確化されていない人の場合。

    ↓

自分の言いたい結論に導くためには、何を証明できればいいのか、ということから、逆算して章立てを考える。

 

①ができればベストですが、実際には、この段階でそれが可能なほどにまで問題意識を突き詰め、堀下げが完了している人は稀でしょう。

なので、多くの人にお勧めするのは、②の方法、結論から逆算していく方法です。


少し具体的に言うと、「こういう結論にしたい」→「それを言い切るには、これが証明できなければいけない」→「その為には、こういうことを調べなければ駄目だ」→「先行文献や裁判例などを探して紹介し、それぞれの内容を分析する必要がある」→「題材にしたものについて、問題点を整理して論点を明確化する説明も要るだろう」→「対象条文の立法趣旨や、成立時の国会答弁も調べなければならないかもしれない」という感じに、思考を進めて行くのです。

まだ結論なんて固まっていない、という人も大丈夫です。そういう人も、仮の結論、直感的に「これは〇〇ということではないか」と感じている結論はありますよね。

現段階では、それをもとに目次・構成を組んでみてください。

最終的な結論が、執筆の過程で変化していくことはそこまで珍しいことでは無いですし、そこは適宜、構成に修正を加えていくことで対応が可能です。

 

なお、前述のように論文の章立てを考える際には、論旨展開に無理のない流れにする為に、前後の章の繋がりを何よりも最重視するべきです。

何度も書いてくどいと思われるかもしれませんけれども、皆さんが書くのは論文なのですから、そうである以上は、議論が最初から最後まで有機的に流れていなければいけません。

どこかでその流れが途切れてしまったり、逆流してしまったり、あるいは停滞してしまったりしていては、いけません。

 

これは私がまだ大学生だった頃に、卒業論文を指導してくださったゼミの教授から徹底的に叩き込まれた考え方なのですけれども、論文を書くということは、ある意味、1つの物語を書くことと同じなのです。

そこでは、第1章から最終章まで、起承転結がしっかりしている、ストーリーが繋がっていることが、求められます。

第1章から最終章までが個々に独立して別個のことを書いていると受けとめられてしまうようではいけません。

それは、エッセイ集やコラム集、あるいは短編集であり、1つの小説になっていません。

それでは、駄目なのです。

そのことを、強く意識してください。

 

また、皆さんが作成した目次案は、それ単体で印刷して、いつでも、かつ即座に確認できるように携帯することをお勧めします

何故ならば、論文の本文を執筆する際は、常に「その時に入力している部分が、自分の書こうとしている論文にとってどういう位置づけにある(どういう意味を持つ)箇所なのか」ということを意識して執筆することが、詰まったり書き直したりということをなるべく回避して順調に論文執筆を勧めていく為には、絶対的に必要となるからです。

 

次回は、私が実際に行った設計図・構成案の作成方法を、ご紹介いたします。