JR中央線・総武線快速の三鷹駅にて2022年4月開業予定である税理士事務所、平林会計事務所の税理士、平林です。
1月31日に最高裁判所が出した、相続税の節税目的で行われた、被相続人が長男の子と行った養子縁組についての有効判決が話題になっていました。
以前にこのブログでも説明したのですが、相続税の税額を計算するにあたっては「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」という計算式で算出される基礎控除額が相続財産の評価額から減額されます。
この「法定相続人」についても2010年10月にこのブログで説明をしているわけですけれど、では、実の子では無い養子は亡くなった人の相続人となることができるのでしょうか。
結論から言えば、そこに実子との差はありません。
それならば養子縁組を大量に行えば、上記の基礎控除額をどんどん大きくできて、相続税を払わないこともできるのではないか。
極論を言えば、そういうこともできそうですけれども、さすがにそのような租税回避行為は認められません。
具体的には、亡くなった被相続人に実子がいる場合には1人、いなければ2人までしか、「法定相続人の数」に含めることはできません。
例えば、実子が1人と養子が3人という場合には、「3,000万円+600万円×3=4,800万円」ではなく、「3,000万円+600万円×1=3,600万円」を基礎控除額として相続税額が計算されます。
逆に言えば、この枠内での養子縁組であれば、相続税の非課税額がその分増えるわけです。
ここに、しばしば相続税対策として養子縁組が行われる理由があるのですけれども、逆に言えば相続人の数が増えるということは、その相続が例えば法定相続分に従って財産の分割を行うことになったような場合には、個々の相続人の取り分がその養子の分だけ減ってしまう、ということにもなります。
今回の裁判はおそらくそれが原因で起きたもので、被相続人の長女が、長男の子との養子縁組は相続税の租税回避のみを目的としたものであり、被相続人には孫と親子関係を創設する意思はなかったので無効だと主張していました。
最高裁の判決次第ではこれまで行われてきた相続税対策の養子縁組が否定されることになるので、その意味でこれはかなり注目された判決なのです。
結果的には長男の主張が通って養子縁組は有効なものであるとの判決が出たわけで、同様の相続対策を現に行っている、あるいはこれから行おうとしている人にとっては、まずは安心できる結果が出たと言えるでしょう。
なお、上記の養子の人数の制限はあくまでも「法定相続人の数」を考える場合のものであって、個々の養子について相続人としての権利に差をつけるというようなものではありません。
実子と3人の養子がいるというケースで、実子の他に相続人となるのが養子の中の誰か1人だけというわけではないのです。
これは、遺留分の計算においても同様なので、この点は誤解の無いようにお願いいたします。
養子に関する論点をしてはこの他にも「相続税の2割加算」の規定等がありますので、それについてはまた日を改めてこのブログで簡単に説明させていただきたいと思います。