JR中央線・総武線快速の三鷹駅にて2022年4月開業予定である税理士事務所、平林会計事務所の税理士、平林です。
前回は、ふるさと納税について返礼品に関する課税関係のことを説明させていただきました。
今回は、個人の資産運用でしばしば選択される株主優待の話をいたします。
なお、優待目的での購入でもそうでなくても、保有している株に対して行われた配当は
配当所得として所得税が課せられます。
しかしこれについては、通常は分離課税として支払の時点で所得税が源泉徴収されることとなって、課税関係はそこで完結いたします。
一方、配当以外に一定数以上の株式を保有している株主に対して行われる株主優待に関しては、話が別になります。
実は、株主優待で受け取ることになる優待品やサービスに関する課税関係は、所得税本法には規定が無いものの、所得税基本通達24-2において明確に「雑所得」に該当すると定められています。
ふるさと納税返礼品の一時所得と異なり、雑所得には特別控除は存在しないので、収入金額から必要経費を差し引いた所得金額が課税される対象となります。
この時、株式の購入費用は優待の必要経費とは考えませんので、優待品・サービスの価額がそのまま課税所得を構成いたします。
つまり、ふるさと納税返礼品のように、他の一時所得を含めた金額の多寡を検討する必要も無く、優待を受けた場合は、そのままストレートに雑所得としての課税が行われるのです。
(ただし、給与所得を1ヶ所からのみ受けていて、株主優待を含めたそれ以外の所得金額が20万円以下である場合は申告不要なので、株主優待を受けているといっても少額でそれ以外にこれといった雑所得が無ければ、納税をする必要も無いということになります。)
さて、ここで問題となるのは、株主優待で受け取った優待品やサービスの価額をいくらと考えるのが妥当なのかです。
株主優待の中には、実施する企業の側が明確に「〇〇円相当の優待品を進呈」と示しているものがあったりもしますけれど、そうではないものについては同じ物品あるいはサービスを受けようと思った場合に、有料ならばいくらを払わなければならないか、ということを基準として評価を行うというのがいいと思われます。
以上のように、本来的には所得税の課税対象となる株主優待なのですが、そのことを知っている納税者は少なく、実際には株主優待に係わる確定申告はほとんど行われていないのが実情でしょう。
このことに対して課税当局が何らかのアクションを起こしてくるのかどうか、起こすとしたらそれはいつになるのか、というようなことは分かりません。
とりあえずは、株主優待の優待品等は法律的には課税対象になる、ということを知っておいていただければ、と思いこのエントリーを公表いたしました。
なお、法人が投資目的で所有する株式に株主優待が実施された場合も、基本は個人所有と同様です。
つまり、厳密に処理を行うならば、例えば雑収入等の勘定科目に時価相当額を計上して、法人税の課税対象とすることになります。