三鷹の税理士 平林 達夫 の日記

三鷹にある平林会計事務所の税理士、平林達夫です。税金に関する疑問、不安、不明事項、法人税務や確定申告、相続、新規起業に関する相談など、いつでもお気軽にご連絡ください。当事務所では、初回相談料は無料とさせていただいております。詳しくは、リンクの欄にあるホームページ等をご覧ください。

暗号資産(仮想通貨)と申告漏れ

JR中央線・総武線快速三鷹駅にて2022年4月開業予定である税理士事務所、平林会計事務所の税理士、平林です。

 

先日、知人と話をしていた時に、「そういえば」と聞かれたのが、2017年にビットコインで多額の含み益を手にした「億り人」の皆さんが、今は自己破産間際らしいねという話でした。

 

確かに当時、ビットコインの価格が一気に200万円超えになったことで、億円単位の利益を獲得した人が何人も誕生しました。

 

ビットコイン相場は今年、緊急事態宣言当時に一度大きくレートを落としたものの、その後、下落前の120万円前後に値を戻しました。
おそらくアメリカ大統領選挙の混迷を反映して、最近は180万円台~190万円台を推移していますし、昨日は遂に3年ぶりに200万円台にも乗るなど、そのレートはかなり上昇を見せています。

 

それが気になってそんな話題を出したのかな、と思って聞いたら、私は知らなかったのですが、以前に何かの雑誌の記事で「億り人」が国税庁所得税の税金未納を指摘されて、多額の本税と延滞・加算税に苦しんでいるというようなことが書かれていたのですね。

最近のビットコインの相場状況を見ていたら、それを思い出したのだと、友人は言っていました。

 

なる程と思いつつ、意図的に脱税をしたならそういうニュアンスの記事にはしないだろうと、少しばかりネットで検索して調べてみました。

 

ニュースになったという人は、低額時に購入して保有していた仮想通貨が2017年に高騰した際、他の仮想通貨への買い替えを行っていたけれども、その時の利益について申告しないままになっていたことを、後から国税庁に指摘されたようです。

どうやら、仮想通貨を日本円等の通貨に換金しない限りは利益が確定しない、というようなことを思っていた模様です。

 

租税法上の仮想通貨に関する所得計算は、勤務先であった事務所のブログで書いたことがありますが、内容的に今では異なることや、私の考えが変化したことがが多いので、こちらのブログには、申し訳ないのですけれども、転載をしていません。

どこかのタイミングで改めて、その辺りはご説明しようと思っていますが、ひとまずいえるのは、これは残念ながら誤った認識だということです。

 

皆さんが分かりやすいように、ここまでは一般的な「仮想通貨」という言葉を使って説明してきましたけれども、法律上では(全てが全てではありませんが)いわゆる「仮想通貨」のことは「仮想通貨」ではなく、「暗号資産」という名称で呼ぶということになっています。

つまり、あくまでも、「通貨」ではなくて「資産」なのです。

 

ですから、「暗号資産」と「暗号資産」の買い替えは、つまり資産と資産を物々交換することと同義なのだと考えてもらわなければなりません。

 

そのように認識していただければ、元々の資産の取得価額と新しい資産取得時の時価を比較して後者が大きければ、そこに差額分だけ利益が生じることは理解しやすいでしょうか。

もともと自分が1万円で買った財産を、10万円相当の物品と交換すれば、9万円の利益が生じますよね。

要するに、そういうことです。

 

「暗号資産」で「暗号資産」を買うということは、通貨を通貨に両替しているのではなくて、資産の物々交換をしているのです(例えば不動産の交換の際などについても、同様の考え方に基づいた租税法上の取扱いをするということになっています)。

 

これは、暗号資産(仮想通貨)を対価にして、何らかの物品を購入した時にも言えることです。

 

例えば10万円で購入した暗号資産で30万円の品物を購入したような場合には、差額の20万円だけ得をしているわけですから、その利益に対して所得税が課税されます。

 

「含み益」には課税されないというのは、それが損益が確定していない状態だから税金も課さないということなのであって、現金化されない取引であったとしても取得価額との間の差額がはっきりすれば、それは損益の確定をも意味するので当然にそこに課税されることになります。

つまりその時点で「含み」では無く、「実現された利益」になるのです。

 

記事に乗った人はその後、交換した先の暗号資産(仮想通貨)の価格が下落して、今やほとんど価値もなくなってしまっているので、換金して税金を納付することもできないそう。

聞くだけでもかなり厳しい話ですけれど、暗号資産(仮想通貨)が法定通貨ではなく資産として法的に扱われている以上は、おかしなところの存在しない理屈であり、文句は付けられないかな、と判断せざるを得ません。

記事に取り上げられた人のことは本当にお気の毒だとは思うのですが、法的なところではちょっとどうしようもない、としか言いようがないのが残念です。

 

ここ最近のビットコイン相場の上昇で利益を出している人は、同じようなことにならないよう、「暗号資産」の価格の上昇で利益が出た場合には、その全額を再投資に使ったりせずに、納税資金に回せる法定通貨に換金する等として確保しておくべきですし、利益についてはしっかりと来年の2月~3月に確定申告をして、脱税にならないように気を付けてください。

 

無申告のまま放置すると、国税から指摘されて本税だけでなく、場合によっては無申告の重加算税までも課されるかもしれません。

 

それを、よく覚えておいてください。