JR中央線・総武線快速の三鷹駅にて2022年4月開業予定である税理士事務所、平林会計事務所の税理士、平林です。
「相続」と「遺贈」について説明したエントリーにて、被相続人の財産を誰が、どれだけ取得するかに関しては、まず第一に遺言書の内容が優先される、と書きました。
とはいえ、例えばそこに「自分の財産は全て愛人に」というようなことが記されていたりした場合、遺された配偶者や子供が気の毒にも感じられます。
特に、被相続人の財産に大きく依存して家族の生活が成り立っていたならば、これは遺族の今後の家計が大問題ですし、被相続人の財産形成に果たした配偶者の役割というものも考慮されるべきだ、という考えもあるでしょう。
そこで、民法では第1028条において、遺された家族の最低限の生活保障や被相続人の財産維持・増加に貢献した者の潜在的持分を顕在化させる等の目的で、次のような規定が設けられています。
民法 第千二十八条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、左の額を受ける。
この条文に則って、相続人が遺言に異を唱え、自分が最低限度もらえるはずの財産につきそれに対する権利を行使することを、「遺留分侵害額請求」と言います。
ただし、被相続人が作成していた遺言書が相続人の遺留分を侵害する内容だからといって、それでその遺言書が無効になるわけではありません。
相続人が行う「遺留分侵害額請求」とは、あくまでも、遺留分を侵害する遺言書の内容の効力を失効させることで、遺留分の確保を行うということに過ぎません。
ここまで書いてきたことについてですが、文字だけではイメージしづらいかもしれないので簡単に図示したものを、下に貼ります。
画像にカーソルを合わせてクリックをすると、別画面にて拡大された物が表示されます。
ただし、上記条文に「兄弟姉妹以外の相続人」とはっきりと記されているように、第3順位の相続人である兄弟姉妹には遺留分が保証されていませんので、そこはご留意ください。
「遺留分侵害額請求」ができるのは、
・ 被相続人の配偶者、
・ 子(およびその代襲相続人)
・ 両親や祖父母などの直系尊属
のいずれかにあたる「相続人」のみです。
前回の「法定相続分」についてのエントリで説明した相続分を反映させてもう少し具体的に書くならば、各相続人に関する遺留分の割合は、次の図のようになります。
なお、民法では第1042条において、遺留分の時効も規定されています。
民法 第千四十二条
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があつたことを知つた時から、一年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。
相続の開始の時から十年を経過したときも、同様である。
合わせて、記憶に留めておいてください。
以上、ざっくりした内容ではありますが、「遺留分」がどういうものであって、その行使によって受け取ることのできる財産がどれくらいになるのかの説明とさせていただきます。