JR中央線・総武線快速の三鷹駅にて2022年4月開業予定である税理士事務所、平林会計事務所の税理士、平林です。
今回は相続における遺産承継の財産の相続分を考える際の、ちょっと特殊な事例となるものを2つ、簡単に説明したいと思います。
まず最初は、「特別受益」。
特別受益とは、相続が発生した場合において被相続人の生前に特に利益を受けていた相続人がいるケースで、利益を受けた相続人と利益を受けていない相続人とが公平になるように、相続財産の配分を調整する制度をいいます。
2015年5月に「相続税の税額計算」と題したエントリーで説明させていただいたように、相続人の相続分は、一旦、相続により取得する財産の価額を合計し、それを分割して求めます。
この計算の際に、被相続人の生前において特定の相続人が被相続人から多額の贈与を受けていることが分かったとしたならば、その特別な贈与により取得した財産の価額は相続税の課税標準の合計額に加算されます。
この、特別な贈与で財産を取得していたことを、相続税法では「特別受益」と呼んでいます。
もともと、相続発生前3年間に発生した贈与は、その贈与財産を相続財産に加算することとされています。
特別受益はこの規定とは別枠のものであり、加算される期間は想像開始前3年間と限らず、5年前、10年前の贈与であったとしても、それが特定受益と認められた場合には、相続財産に加算して総額の計算を行います。
つまり、その分の相続分を相続開始よりも前に既に受け取っていたという扱いになるわけです。
具体的な計算例を挙げてみます。
相続人が配偶者と長男、次男の3人であり、相続財産が4,000万円、長男は以前に事業用資産として1,000万円を贈与された、というようなケースを想定してみます。
この場合、長男が受け取った1,000万円が特定受益とされなければ、具体的な相続分は、
配偶者...4,000×1/2=2,000万円
長男・次男...4,000×1/4=1,000万円
ということになりますが、特定受益とされれば
配偶者...(4,000+1,000)×1/2=2,500万円
長男...(4,000+1,000)×1/4 - 1,000=250万円
次男...(4,000+1,000)×1/4=1,250万円
という計算が行われることになります。
それぞれの金額が大きく変わったことが、お分かりいただけるでしょうか。
特別受益に該当するかしないかというのは争いのもとにもなる事項だといえますから、その判定は素人判断で行うのではなく。必ず専門家に相談するようにお願いします。
「特別受益」に続くもう1つが「特別寄与」。
これは、共同相続人の中に、被相続人が財産を維持・増加させることに対して特別の貢献をしたと認められる者がいれば、相続財産の総額からその相当額を控除して具体的な相続分の計算を行うことになります。
例えば相続人が長男と息子の2人であり、相続財産が1,000万円だというケースで、長男に特別寄与が500万円あるとします。
この場合の相続分は、兄弟それぞれに1,000万円の半分の500万円というのではなく、
長男...(1,000−500)×1/2+500=750万円
次男...(1,000−500)×1/2=250万円
という計算式が用いられることになるのです。
以上、財産相続分の2つの特殊な計算に関する簡単な説明をさせていただきました。
特別受益も特別寄与も、ここでご説明したように規定としては存在しているものなのですけれど、実際に適用させるには少しハードルが高くて、争いごとになりかねないものであることは、最後にご承知おきいただきたいと思います。