JR中央線・総武線快速の三鷹駅にて2022年4月開業予定である税理士事務所、平林会計事務所の税理士、平林です。
新型コロナウイルス問題で色々と気が沈むようなことも多く、出口がなかなか見えないことに心配や不安が湧きたってきますが、それでも4月になって年度が替われば、税法は改正されていくものです。
そこで、今回は令和2年度の税制改革から、特に注目度の高いものを紹介してみます。
建物の売買に関する消費税処理の改正です。
だいぶ前になりますけれども、このブログで消費税の非課税項目について書いた際に、その中には(居住用の)住宅の貸付が含まれているということを紹介させていただきました。
一方で、貸付を行う為の不動産を買った場合、土地の譲渡は住宅の貸付と同じように消費税が非課税とされている取引ですが、建物部分についてはそのような規定はないので普通に消費税がかかってきます。
ここまでが前提です。
消費税の納税額の計算上、仕入税額の全額控除ができない場合には、個別対応か一括比例配分のいずれかの方式で控除額が計算されることになります。
消費税が非課税となる居住用物件の賃貸借を主に行っているような場合は、その建物に関する課税仕入れは「非課税売上のみに対応する課税仕入」として仕入税額控除に使えるものが全く無いか、かなり少なくなってしまいます。
一方で、例えば投資用物件としてマンションを1棟丸々で購入することを考えたとして、業者から買った場合には結構な金額の消費税を支払っているのが普通ですから、これはできれば控除対象(あるいは還付対象)にしたいと思うのが人間心理というものでしょう。
ですので、これを控除対象とすることを目的に様々なスキームが開発され、それを封じる国税との間にまさしくいたちごっこのような行為が行われてきたのがこれまでの歴史です。
とはいえ、過去の経緯は今回の内容には関係してきませんから、ここでは割愛することにします。
要するに、仕入税額控除ができない、もしくはその範囲が限りなく少なくなってしまうのは、課税売上割合が低いところに理由があります。
つまり、まず課税売上割合が95%未満であれば仕入税額の全額控除が使えなくなるので、非課税売上にのみ対応する課税仕入が全額控除される可能性がここで無くなります。
それでも非課税売上に対応する仕入税額を何とかして控除対象にしようとする場合には、原則である個別対応方式を選択せずに、一括比例配分方式を選ぶことが考えられます。
しかし、課税売上割合が低ければ、これをしたところで控除できる仕入税額はそこまで多くなりません。
例えば税込1億1千万円のマンションを購入した人がいたとします。
これを居住用の賃貸物件として貸すと非課税売上が発生し、他にほとんど課税売上が無い場合にはその課税売上割合は95 %には到底なりません。
当然、支払った1千万の消費税が控除されることはありません。
居住用投資物件の購入は「非課税売上のみに対応する課税仕入れ」に該当するので、個別対応方式だと控除は一切できません。
一括比例配分でも、仮に課税売上割合が10%なのだとすれば、1千万×10%で100万しか控除できません。
こうなってしまうのは、そもそも課税売上割合が95%未満であるせいからなのですから、力技でも、それをどうにかしてしまえばいい。
そういうことを考えて行われていたスキームが、今回の改正で封じられることになるのです。
話の前置き段階で随分と長くなってしまいました。
ですので、今回はここで一旦話を切らせていただき、続きは追って別のエントリーで行うことにします。