あと数か月後の令和5年10月1日には、消費税に係るインボイス制度が否応なしに開始されます。
今回は、制度的な特例について特例的な取扱いを主に説明してきた第1回、第2回に続いて、特に今までは気にしてこなかったけれども、10月以降は注意する必要がある項目のうち、多くの事業者に関係してくるであろうETC利用料について、説明をさせていただきます。
<1> ETC利用料のクレジット引落(基本的理解)
様々な点から利便性が高いこと、そして料金が割引になること等から、今や高速道路を走る車両はそのほとんどがETCの機器を設置しています。
高速料金の支払時に、都度現金払い又はカード払いをしているのであれば、有人料金所で領収証を受け取れるので、インボイス制度下で仕入税額控除に使える適格請求書等を受け取れるので、そういう意味では特に問題はありません。
しかし、ETC機器を取り付けてクレジットカード決済を選んでいる場合は、そのままゲートを通過して、登録しているカードで後日利用分の高速代が引き落とされることになります。
つまり、領収証を当日に受け取っていないわけですが、この場合はどのようなことになるのでしょうか。
高速道路会社は、首都高速道路㈱も東日本高速道路㈱も中日本高速道路㈱も、それ以外の各社も、インボイス番号は当然に取得しています。
ですから、彼らが管理している高速道路を使用した場合の料金は、原則的には仕入税額控除の対象とできるはずです。
ところが、ここがインボイス制度の面倒なところ。
原則的には、たとえ仕入先、経費の支払先がインボイス番号を取得している課税事業者であったとしても、そこから受け取る請求書や領収証が制度に適合している適格請求書等ではなかったのであれば、仕入税額控除の対象とすることはできないのです。
ここまでの2回で紹介してきたように、適格請求書等を受け取るのが手間であるような一部の取引については、適格請求書等の取得が免除されていて、帳簿に必要事項さえ記帳されていれば仕入税額控除の対象とすることができることになっています。
しかし、ETC利用料のカード決済については、それ等の特例の対象にはなっていません。
つまり、仕入税額控除の対象としたければ、何とかして適格請求書等に該当する領収証などを手に入れなければならないのです。
<2> インボイス制度下での対応
では、具体的にどのような対応が必要となるのか。
会社契約のETCコーポレートカードであり、毎月「ETCコーポレートカード請求書(通行料金等請求書)」が送付されているのであれば、話は簡単です。
というのも、時期は各社で違いがあるかもしれませんが、こちらは、各社がインボイス制度に対応した適格請求書様式に書式を変更してくることになっているのです。
つまり、ETCカードを利用している側が何かやらなければならないことがあるわけでは、ありません。
新しくなった請求書を、今まで通り、入力原票として利用し、保存をしていれば、それで大丈夫です。
問題は「ETCコーポレートカード請求書(通行料金等請求書)」のように請求書が定期的に送付されてこない、普通のETCカード利用のクレジット決済です。
この場合の高速各社の対応は、それぞれのHPで発表されています。
一例として、東日本高速道路㈱ の該当ページのリンクを、以下に貼ります。
要は、これに該当するものについては、ETC利用照会サービスから「利用証明書」の発行を受けなければならない、とうことです。
登録の手間はあるものの、まあそれはいいとして、この「利用証明書」の発行を受けるという方式には、注意点、面倒なところがあります。
<まとめ発行では駄目であること>
「利用証明書」は、料金所での「領収証」の代わりに発行されるものです。
一応、「〇月分」という感じでまとめ発行ができるようにはなっているようですが、ここで改正電子帳簿保存法との絡みが出てきてしまいます。
紙で交付を受けたのではなく、ネット経由等で電子的に取得した領収証等は電子帳簿保存義務の対象となり、1枚ごとに「日付」「相手先」「金額」の3つの項目で検索ができるようにしなければなりません。
つまり、まとめ発行で、例えば50枚の領収証が1ファイルになっているような場合には、この要件を満たさないことになります。
面倒でも、領収証1枚ごとに、データのダウンロードを行わなければなりません。
また、都内の事業者等で、首都高速道路㈱、東日本道路㈱、中日本道路㈱ の管理区間をまたいで高速道路を頻繁に利用しているような場合は、料金所を通過するごとに「利用証明書」が発行されると思われます。
これ等のことから、ダウンロードしなければならない「利用証明書」の枚数は非常に多量になり、「ETC利用照会サービス」での発行手続きにかなりの手間を擁することが想定されます。
<取得した「利用証明書」の保管>
上記項目にも書きましたが、「ETC利用照会サービス」からの「利用証明書」取得は、電子発行によるものであり、紙の証明書を受け取るわけではありません。
つまり、取得した「利用証明書」は、改正電子帳簿保存法の適用対象となり、保存要件を満たす形でファイル名などを付け、社内のサーバーや社外のデータストレージサービス等に、適切に保存する必要があります。
取得した「利用証明書」を印刷して、紙ベースで保存していれば大丈夫という話にはなりませんので、ご注意ください。
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以上、今回はETC利用料とインボイス制度について書かせていただきました。