三鷹の税理士 平林 達夫 の日記

三鷹にある平林会計事務所の税理士、平林達夫です。税金に関する疑問、不安、不明事項、法人税務や確定申告、相続、新規起業に関する相談など、いつでもお気軽にご連絡ください。当事務所では、初回相談料は無料とさせていただいております。詳しくは、リンクの欄にあるホームページ等をご覧ください。

インボイス制度で注意すべきこと      ~振込手数料

いよいよ始まったインボイス制度。

各種取引の処理において、適格請求書等の受け取りが無くても「仕入税額控除」の対象になる「課税仕入」として取り扱っていい特例等もある為、その判断を間違いなくできるかどうかが問われるところとなっています。

 

そんな中、これについては取扱いがどうなるのだろうかと悩まされることも多いのですが、今回はそのような中の1つ、銀行から買掛等の支払をした際の、振込手数料の扱いについて、説明させていただきます。

なお、売掛金や未収入金等に関し、こちらが負担するものとして請求額から差引かれて入金されることとなった、その差引振込料の処理については、「売上返還」として処理すべきであることを、4月30日のエントリーで書かせていただきましたので、今回はそこについては割愛させていただきます。

 

<1> 振込の3つの形態

このトピックについて説明する場合に、最初に確認しなければならないこととして、振込を行う、その方法に複数の種類があることが挙げられます。

これは振込作業を行う形態というか媒体というか、要するに、どこで、どのように振込をするのかという話であり、具体的には、次の3つに分けることができます。

 

  1. 窓口で振込を行う
  2. ATMで振込を行う
  3. ネットバンクで振込を行う

 

このような分類をしなければならない理由は、この3つがそれぞれ、インボイス制度下においては異なる取扱いを受けることになるからです。

それでは、それぞれのケースについて、順に紹介いたしましょう。

 

<2> 窓口で振込を行った場合

話としては、これが一番単純かもしれません。

実際に銀行の窓口に行って振込をしたことがある人であればご存じでしょうが、この場合は、手続きが完了した時点で、銀行から、振込料の領収証がペーパーで手渡されます。

したがって、支払いをした(振込を依頼した)こちら側としては、それを適切に保管しておくことでインボイス制度の「仕入税額控除」の要件を満たせますので、問題なく、「課税仕入」として処理することができます。

 

店舗などで物品の購入をした場合と同じ、インボイス制度における仕入の、基本中の基本の取扱いと言えるでしょう。

 

<3> ATMで振込を行った場合

従来は、ATMから発行される振込票を保存することで、その支払に関わる振込手数料の証拠書類としていました。

では、インボイス制度下においてもこれまで同様に、それを保存しておけばいいのでしょうか(振込票が適格請求書等の要件を満たす書式になるのでしょうか)。

実は、その必要はありません。

 

というのも、銀行やコンビニその他に設置されているATMは、以下の回の<3>で解説させていただいた、「自販機等からの商品等購入に関わる特例」に規定されている「自販機等」に該当するのです。

 

hirabayashikaikei.hatenadiary.jp

 

この特例においては、支払額が3万円未満のものについては、適格請求書等の発行が無くとも、必要事項が記載されている適切な帳簿を保存することで、「仕入税額控除」の対象である「課税仕入」として処理することができます。

そして、ATMでの振込手数料が3万円以上になることがあるとは、一般的には想定できません。

つまり、ATMで振込を行った場合の振込手数料については、従来通りに仕訳を起票し、「取引日」「支払先(金融機関名)」「金額」「内容(振込手数料である旨)」の入力をしておけば、適格請求書等の有無は問われないこととなるのです。

 

処理として一番単純で簡単なのは、このパターンですね。

 

<4> ネットバンクで振込を行った場合

3つの分類のうち、インボイス制度に対応する為に会計担当者がしなければならない処理が、一番面倒なのが、これでしょう。

 

当たり前のことをわざわざ書くなと怒られてしまうかもしれませんけれども、前提として確認をさせていただくと、ネットバンクで振込を行った場合は、窓口と異なり、金融機関から、振込料の領収証を紙で受け取ることはできません。

つまり、<2>と同様の取扱いはできないということになります。

 

また、ネットバンク取引に用いたPCやスマホは、「自販機等からの商品等購入に関わる特例」に規定されている「自販機等」に該当しません。

ですから、状況的にはどこからどう見ても課税仕入としか思えないとしても、適格請求書等の受取・保存が無ければ、「仕入税額控除」の対象となる「課税仕入」として処理を行うことはできません。

 

では、どうするのか。

取れるべき方法は1つ、紙で受け取れないのであれば、ネットバンクのサイトから振込手数料に関わる適格請求書等をダウンロードで取得するしかありません。

各金融機関で発行画面には違いがあるでしょうが、一例として、当事務所のメインバンクである三菱UFJ銀行のサイトから、この問題について説明をしているページをご紹介します。

 

www.bk.mufg.jp

 

三菱UFJ銀行の口座であれば、後日一括引落の手続きをしていれば後日郵送ハガキで月間利用料を通知する適格請求書等を受け取るという選択肢も選べるようですが、それ以外の場合は、振込をする都度(あるいは毎月)、適格請求書等をダウンロードして取得することになります。

これは、かなり面倒だと思われるかもしれません。

 

ただ、この話の面倒なのはそこではなく、紙ではなくデータで取得する証憑書であることから、これが改正電子帳簿保存法の適用対象となるところにあります。

同法において、事業者が行わなければいけない対応については、以下のエントリーにて解説をしていますので、まだお読みいただいていない方は、この機会に、是非、ご一読ください。

 

hirabayashikaikei.hatenadiary.jp

 

以上、今回は金融機関から買掛金等を支払う際に発生する振込手数料について、インボイス制度下の取扱いと対応を書かせていただきました。

 

細かいことをいちいち言われても、と思われるかもしれません。

しかし、現状の法制度下においてはこれが事業者に求められている対応であり、これを守らないと、本来は「仕入税額控除」の対象と成り得るものが対象から外れてしまうことで、支払わなくてよかったかももしれない消費税等を余計に納付しなければならなくなってしまう可能性があります。

 

個別事例等については、皆さんが顧問契約をされている税理士、国税庁電話相談センター等にお問い合わせいただければと思いますが、原則的な取り扱いはここに書いたようなものであると、ご承知ください。